研究課題/領域番号 |
22K05939
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
堀内 正隆 北海道医療大学, 薬学部, 准教授 (90322825)
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研究分担者 |
永田 崇 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (10415250)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ハイブリッド酵素 / セルラーゼ / セルロース / 好冷菌 / タンパク質工学 |
研究実績の概要 |
令和5年度は、低温型ハイブリッドセルラーゼの酵素ユニットのうち、セルロース線維にニックを入れる作用をもつと考えられる、Sclerotinia borealisのグリコシドハイドロラーゼファミリー12 (sbEG3) のクローニングおよび組換えタンパク質の発現を試みた。S. borealisのゲノムには2種類のsbEG3候補遺伝子が存在していたが、取得済のcDNAライブラリーから増幅できたのは1種類だけであった (以下、sbEG3Bとする)。増幅されたsbEG3Bにはさらに2種類バンドが確認され、配列分析の結果、一方はオルタナティブスプライシングにより、構造ドメイン領域よりC末端の配列が欠質しており、より低分子量の酵素となることが予想された。次に、Pichia pastorisおよびBrevibacillusを宿主として、sbEG3B組換えタンパク質の生産を試みた。その結果、Brevibacillusにおいてのみ、sbEG3Bの培地中への分泌発現を確認することができた。 発現したsbEG3Bは、C末端側に付加したHis-tagを利用して、Niキレートカラムによりアフィニティー精製した。この精製物による、結晶性セルロースAvicel PH-101に対する分解活性を調べたが、現在のところ、明確な分解活性を観測することはできていない。今後は、分解により適した短かいオリゴ糖などを基質として、活性測定を試みる予定である。 また、酵素ユニットに利用できる他の酵素遺伝子として、S. borealisのセロビオハイドロラーゼ1 (sbCBH1)のクローニングも開始した。その結果、現時点において、2種類のsbCBH1候補遺伝子のクローニングに成功しており、現在、その組換えタンパク質の発現を複数の宿主を用いて検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリッド酵素の酵素ユニットの個別生産のうち、当初2年間に実現すべき2種類のうち、2種類目の生産に成功し、ハイブリッド酵素生産の準備が整ったたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ハイブリッド酵素のすべての酵素ユニットの個別生産を完了して、それぞれの酵素活性を測定する。活性が確認できた酵素ユニット同士を、遺伝子工学的あるいはタンパク質化学的に接続したハイブリッド酵素を作製するとともに、個々の酵素ユニットについては、結晶化あるいはNMRによる立体構造解析に向けた準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、低圧クロマトグラフィー装置の購入を計画していたが、改めて金額見積りをしなおしたところ、希望していた性能を満たすためには予算が不足していることが明らかとなった。そこで、今年度はこの装置の購入は見送ることとした。一方で、組換えタンパク質の生産量が大幅に増大する見込みとなり、当初計上した消耗品費を上回ることになった。そこで設備品購入用に計上していた使用額を次年度以降の消耗品費等へ振替えて、次年度使用額として繰り越すことにした。
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