研究課題/領域番号 |
22K05940
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
筑井 麻紀子 東京国際大学, 商学部, 教授 (40275798)
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研究分担者 |
松村 敦子 東京国際大学, 経済学部, 教授 (60209608)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アスベスト / 石綿 / 産業連関分析 / 多地域産業連関分析 / 国際産業連関分析 |
研究実績の概要 |
OECDが公表している国際産業連関表(OECD-ICIO)をアスベストの国際フローについて拡張し、金額ベース及び重量ベースで推計した付帯表を推計した。OECD-ICIOを選択した理由は、全てのアスベスト採掘国(ロシア、中国、ブラジル、カザフスタン)をカバーしているためである。また、基準年は2014年としたが、これはアスベストの採掘が1980年代をピークに年々減少していることと、今後の研究計画として建築物などの社会資本に蓄積されたアスベストのストックを分析する際に、2014年を基準として、前後の年に時系列の推計を広げていくためである。 推計した産業連関表(Asbestos extended multi-regional input-output table, AMRIOT)では、採掘されたアスベストのアスベスト含有製品使用国の各製造業部門への投入量も金額ベース及び重量ベースで推計されている。 このAMRIOTの推計によって、アスベストの国際フローが明らかにされると共に、国際産業連関分析アプローチの採用により、各国の部門別最終需要が、どの国にどれだけアスベストの採掘とアスベスト含有製品を誘発しているかを定量的に明らかにした。この研究の成果は、2023年5月時点で国際学会誌への投稿の準備を進めている。 また、AMRIOTをさらに拡張し、各国のアスベスト採掘部門の雇用者数を推計することにより、各国の部門別最終需要が、アスベスト健康リスクに晒される採掘労働者数を国別に推計を行った。 この研究の成果は、2023年3月に環太平洋産業連関分析学会主催の国際学会ICES 2023で口頭発表を行い、同様に国際学会誌への投稿の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画で計画していた基本価格での推計に固執せず、輸出価格ベースでの部門分割を行うことにより、アスベストに拡張した国際産業連関表(AMRIOT)の推計を円滑に進めることができた。 2022年度はアスベストの採掘についての拡張を、2023年度はアスベスト含有製品に含まれる鉱物アスベスト・フローの推計を目標としていた。鉱物アスベストを生産データと貿易データから国際産業連関表をアスベスト採掘部門について拡張、セメント等の建材、自動車用品、衣類・繊維製品、シーリングに利用される紙製のパッキングなどのアスベスト含有製品を生産している製造業部門を建てることにより、アスベストの国際フローを重量ベース・金額ベースで推計した。 また、国際産業連関分析に用いたプログラムも、これまでの研究で採用したプログラムをAMRIOTのデータ形式に合わせて改良することにより、順調に開発することができた。このため2024年度に予定していた研究計画の一部である、アスベスト使用の国別最終需要別誘発の推計も進めることができ、大幅に研究を進展させることができた。そして、主要先進国の最終需要によるアスベスト使用の誘発量とアスベストのリスクに晒される労働人口の推計に着手することができた。 当初の計画以上に進展した理由としては、これまでの取り組みにおける準備状況をやや過小評価していたことが考えられる。また、データの収集・ダウンロードについて有能なアルバイトを確保することができ、順調に進めることができた点が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
アスベストの健康リスクに晒される、アスベスト含有製品製造業の従事者数を推計し、健康リスクを定量的に推計したい。 またこれらの研究成果をできるだけレベルの高い国際学術雑誌に投稿し、掲載を目指したい。 その上で、AMRIOTの推計方法を改良し、基本価格ベースでの金額表への拡張を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は学術研究振興資金を獲得できた上、COVID-19の感染状況を鑑みマレーシアで開催された国際学会(IIOA 2022)への参加を見送ったために、計画していた使用額に対して、実際の使用額が大幅に減ってしまった。
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