研究実績の概要 |
1.エチレンブラシレート(EB)分解菌のスクリーニング 八王子市高尾山周辺地域より土壌、植物等の環境試料を採取し、EBを炭素源とした集積培養によりEB分解菌のスクリーニングを行った。EBを唯一の炭素源として、120の土壌試料から50株程度の候補株を分離した。さらに、安定な生育を示す菌を10株選抜した。16SrRNA遺伝子全長解析し、DDBJ/NCBI/EMBL登録を行った。(それぞれ、EB4h, EB10e, EB10f, EB10h, EB11a, EB11i, EB11j, EB11k, EB11L (accession number LC756462~756471)として登録)。同定の結果、β-proteobacteria, γ-proteobacteria, Actinomycetes, Firmicutes (Bacillus sp.) と多様な細菌が得られた。さらに海洋中に拡散した汚染物の分解を目的として高塩濃度下での分解菌スクリーニングを開始した。 2.分解代謝物の解析 新規に分離した菌株のEB分解経路を明らかにすることを目的に、培養抽出液からの分解代謝物検出を試みた結果、良好な生育が見られた培養抽出液からGCMSにより代謝物と思われるピークがほとんど認められなかったことから、速やかな分解が起こっていると考えられた。そこで、休止菌体反応によりEB分解反応を行ったところ、エステル化処理試料に大きな分解代謝物ピークが認められ、ブラシル酸ジメチルエステルと同定された。さらに反応液上清を水層分析用GCカラムにより分析したところ、エチレングリコールと同じ保持時間にピークが認められた。以上より、分離株はEBをリパーゼ等のエステル分解酵素によりブラシル酸とエチレングリコールに分解していることが明らかとなった。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により学会発表を控え、市内発表会としたため、学会参加費分が減少した。また、培養抽出物解析による代謝中間体の構造を速やかに決定できたため、分析関連経費が抑えられた。 次年度は、分解メカニズム解明を目的とした分離菌のゲノム解析を積極的に実施すると共に、代謝中間体の分析のために使用するHPLCポンプ等の新規購入が必要となる。 次年度使用計画(概算)学会参加(国内2名、1回)100,000(計画通り)、消耗品等1,300,000(計画増)、計1,400,000
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