研究課題/領域番号 |
22K05946
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
朝田 景 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 主任研究員 (10574460)
|
研究分担者 |
片柳 薫子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (20455265)
山下 尚之 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30537345)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 一酸化二窒素 / モデリング / 農耕地 / 土壌微生物 / 土壌水分移動 |
研究実績の概要 |
既存の一酸化二窒素(N2O)排出予測モデルは土壌中の水移動プロセスの再現能力が低く、N2O排出量を予測する上で大きな不確実性要因となっている。本研究は、硝酸性窒素(NO3-N)溶脱モデルとして実績があるLEACHMで計算された土壌水分量等の出力値をN2O排出予測モデルであるDNDC-Riceの入力値とし、さらに、各モデルのプロセスの一部を機械学習モデル(ML)に担わせることにより、新たな統合モデルを構築してN2O排出量の予測精度を大幅に改善することを目的とする。窒素溶脱に伴う水質汚染と温室効果ガス排出を同時に精度よく予測するモデルを開発することで、農耕地からの環境負荷低減に向けた次世代の窒素管理手法への応用が期待できる。初年目ではまず、農耕地からのN2O排出量とNO3-N溶脱濃度を同時観測した国内の圃場試験に関して文献レビューを行った。目的に適した観測地を3か所で確認し、それぞれの気象、土壌、作物等の情報を抽出し、モデル入力値としてまとめた。このうち、北海道三笠の観測地にLEACHMを適用し、地温(℃)、マトリックポテンシャル(cm)、WFPS(%、土壌間隙のうち水で占められた割合)、作物の窒素吸収量(kg/ha)、土壌呼吸量(kg/ha/day)、作土のNO3-N含量(mg/kg)、NO3-N溶脱濃度(mg/L)等について、実測値とモデル計算値を比較し、予測精度を評価した。しかし、現状のLEACHMは、積雪下における物質の動態を予測対象としていないため、冬から春先の地温や土壌水分量の変化を再現できなかった。そこで、積雪下の熱・物質移動を考慮したモデル改良を行った結果、窒素動態の予測精度も向上させることができた。LEACHMによって十分な予測精度があると判断した三笠の観測地について、DNDC-RiceとMLにモデル入力値を渡し、それぞれに計算を試みた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献レビューによれば、N2O排出量とNO3-N溶脱濃度の同時観測地3か所のうち2か所は積雪地域に位置していた。現状のLEACHMは積雪地域への適用に向かないため、モデル改良が必要となった。モデルの改良および改良後の予測精度の評価に時間を要したが、当初の計画通り、圃場試験に関するモデル入力値を共同研究者に渡し、観測されたN2O排出量とNO3-N溶脱濃度を再現するためのモデル計算およびML構築を着実に進めることができた。以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策については、以下の通りである。1)LEACHMで予測された土壌水分量や土壌のNO3-N含量等をDNDC-Riceの入力値として受け渡し、DNDC-RiceでN2O排出量を予測する。2)LEACHMによる出力をMLの説明変数とした統合モデル、MLの出力値をDNDC-Riceの入力値とした統合モデル、LEACHEM×DNDC-Riceの予測値と実測値の残差をMLの目的変数とした統合モデル等、様々な組み合わせでMLとプロセスモデルの統合を探索する。3)LEACHEM×DNDC-Rice×MLによる単独または統合モデルの予測精度を「栽培期間」や「地点間」の観点から検証してさらなるフィードバックを行い、N2O排出とNO3-N溶脱の最適モデルを提案する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品購入の費用を低く抑えられたため、繰り越しが生じた。次年度に向けて、研究成果発表のための学会参加費や旅費等として使用する計画である。
|