研究課題
本申請課題研究では、ウシの妊娠率の向上に向けて、受精卵(胚)と母体子宮の相互作用を明らかにするための基礎知見を得ることを目的としていた。ウシを含む哺乳動物の妊娠の成立には、I型インターフェロンにより着床期子宮内に誘導されるインターフェロン誘導性遺伝子(ISG)が必要であるという仮説のもと、新規ISGを見出し、その機能解析を行うこととした。本申請課題研究では、①ISG発現が子宮内膜上皮細胞に及ぼす影響の解析 ②細胞外からの子宮細胞へのISGの作用の解析 ③ストレス応答経路への関与を検証 の3つの項目について検証することとしていた。本年度は、前年度に続き①ISG発現が子宮細胞に及ぼす影響の解析、および②細胞外からの子宮細胞へのISGの作用の解析、に取り組んだ。①では、新規ISGの中でも特に重要であると思われた候補ISGについて、発現ベクターを構築して細胞への導入実験を行った。しかしながら、前年度より条件検討を継続してきたが、導入効率を十分に改善するまでには至らなかった。そのため、②として組換えタンパク質を用いた添加実験を中心に行うこととした。ISG添加実験では、細胞への添加により、容量依存的および時間依存的に細胞増殖性の有意な向上がみられた。さらに、血管新生関連遺伝子についても発現上昇がみられたことから、ISGが着床過程に重要な現象である胎盤形成時の血管新生に関与することが示唆された。現在タンパク質レベルでの発現変化についても検討中である。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究では、前年度に続き条件検討を継続してきた細胞への遺伝子導入については断念したものの、組換えタンパク質を用いた添加実験により、新規ISGs候補が血管新生に関与する可能性を示す結果を得ることができた。哺乳類の着床過程における血管新生の重要性には疑う余地がなく、重要な知見である。そのため、進捗状況は想定の範囲内であると考え、(2)おおむね順調に進展している と判断した。
今後は、順調に進めている組換えタンパク質を用いた添加実験を中心に継続して行い、さらに血管新生の関与について詳細に検証していく予定である。当初の研究計画では、③ ストレス応答経路への関与を検証する としていたが、今年度の結果を受けて血管新生に関連する経路を優先して検証する予定へと変更する。
消耗品や材料費を節約して使用したため僅かに残額が生じた。これにより研究の遂行に支障をきたすものではなかった。次年度の消耗品や材料費に充てる予定である。
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