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2023 年度 実施状況報告書

栄養処理による食肉の呈味制御:遺伝子及びメタボローム解析と代謝調節による高品質化

研究課題

研究課題/領域番号 22K05968
研究機関新潟大学

研究代表者

藤村 忍  新潟大学, 自然科学系, 教授 (20282999)

研究分担者 島元 紗希  新潟大学, 自然科学系, 助教 (90875395)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード食肉 / 呈味 / アミノ酸 / 飼料 / 機能性 / 高品質化 / メタボロミクス / 筋肉
研究実績の概要

食肉の品質において「美味しさ」は重要である。国際的な食肉研究のターゲットも生産性から品質や機能性に移行してきている。従来の育種及び食肉加工等の分野による高品質化に加え、飼料原料を用いた食肉への抗酸化性の付与等に関しても検討がなされてきた。しかし飼料による食肉の呈味の調節は難しいと考えられてきた。食肉の呈味有 効成分は、グルタミン酸(以下Glu)、イノシン酸、カリウム、乳酸等が関与し、特にGluの影響が大きいことが報告されている。そこで食肉の高品質化を目標 に、家禽をモデルとして食餌栄養素による美味しさの向上を試み、アミノ酸代謝を基にした肉質要因との関係、さらには機能性成分の調節についての検討を行っ た。リジン(Lys)の制限飼料の給与により鶏浅胸筋のグリシン(Gly)量が有意に増加し、また肉スープにGlyを添加することで、うま味、コク、味の濃さが上 昇したことを基礎とし、肉用鶏に対して試験飼料のLys割合を設定したモデル等を用いて短期間の給与を行い、筋肉の呈味成分、遊離Glyを含むアミノ酸量及びアルギニン:グ リシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT)のmRNA遺伝子発現等を検討した。浅胸筋遊離Gly、総遊離アミノ酸量はLys90%で増加した。産肉性に差は見られなかった。またLys割合の異なる基礎飼料にグアニジノ酢酸(GAA)を0.06%及び0.12%配合した結果、この調節がGly量に影響する可能性が示唆された。一方、食肉の機能性成分としてイミダ ゾールジペプチドに注目し、食餌性アミノ酸と同ペプチド量の関係についても解析を行った結果、飼料のアミノ酸バランスがカルノシン及びアンセリン量に影響 することが示された。これらから食餌性アミノ酸は、食肉の高品質化に向けた要因の一つとなる可能性が推察され、代謝メカニズムとともに検討を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

食肉の呈味成分及び機能性成分の量を、食餌性アミノ酸による代謝を基として調節の可能性を探り、そのメカニズムを探求するため、検討は概ね順調に進展している。この目的のため、1:飼料による食肉Glu増加モデル肉試料の調製呈味性アミノ酸量の増加及び呈味向上モデルとして確立した1)飼料Lys量増加による呈味向 上モデル、2) 飼料Lys量抑制による呈味向上モデル等を10日間給与した肉用鶏より試料を得て検討に供試した。それに対しGAAの添加の有無を組み合わせて解析を進めた。また2.飼料による食肉Glu増加モデルのアミノ酸代謝メカ ニズム検討について計画通り、検討が進んでいる。3:イミダゾールジペプチド量への影響については、アミノ酸バランス及び飼料原料の両者に着目し、また評価系を増やしてアミノ酸の新たな機能を検討し、概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

食肉の呈味成分は飼料では調節は困難と考えられてきてきたが、基礎研究の進展により覆されつつある。国際的に成長改善因子として利用されてきた飼料添加ア ミノ酸に 「食肉の呈味向上因子」、「機能性成分の調節因子」、「品質制御因子」という新たな機能を見出し、研究を展開している。本研究においては、飼料アミノ酸による筋肉での呈味 成分量の調節とメカニズムを追求しており、さらに新たにフィードバック調節等に着目した食肉のグリシン(Gly)の増加とコクの付与という新たな呈味向上手法 に挑戦している。それによる呈味性アミノ酸量の増加及び呈味向上モデル、また新たなモデルを構築し、飼料による食肉Glu増加モデルのアミノ酸代謝メカニズム を計画通りに検討を進めている。健康機能性によって注目されるイミダゾールジペプチド量の調節については飼料のアミノ酸バランス及び飼料原料等の調節からアミノ酸代謝と機能性の検討を進めている。それらの基礎的知見に基づき、 飼料アミノ酸の調節による呈味向上モデルの検討、さらに筋肉のGlu及びGly代謝解析と肉質評価に注目した設計、機能性に着目し、食肉高品質化の実現に 向けて検討を進める。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] The short‐term feeding of low‐and high‐histidine diets prior to market affects the muscle carnosine and anserine contents and meat quality of broilers2023

    • 著者名/発表者名
      Shalura, S Kai, T Okada, S Shimamoto, S Fujimura.
    • 雑誌名

      Animal Science Journal

      巻: 94 ページ: 1-11

    • DOI

      10.1111/asj.13856

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] おいしさや機能性による鶏肉の高品質化の可能性2023

    • 著者名/発表者名
      藤村忍, 島元紗希
    • 雑誌名

      日本食生活学会誌

      巻: 64 ページ: 119-125

  • [学会発表] 食餌性アミノ酸による鶏肉の呈味及び機能性成分の制御:メタボロミクスを用いた高品質化2023

    • 著者名/発表者名
      藤村忍, 島元紗希, 甲斐慎一, 渡邊源哉
    • 学会等名
      第77回日本栄養・食糧学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 食餌性アミノ酸による食肉のイミダゾールジペプチド量の調節と肉質に関する研究2023

    • 著者名/発表者名
      藤村忍, Sharula, 甲斐慎一, 島元紗希
    • 学会等名
      第13回カルノシン・アンセリン研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 美味しさや機能性による鶏肉の高品質化の可能性2023

    • 著者名/発表者名
      藤村忍, 島元紗希
    • 学会等名
      日本食生活学会第66回大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 食餌性ヒスチジンの短期給与が鶏の筋肉イミダゾールジペプチド量および代謝関連物質に及ぼす影響2023

    • 著者名/発表者名
      源代暢, Sharula, 佐藤寛太, Zinovyeva Olga, 甲斐慎一, 島元紗希, 藤村忍
    • 学会等名
      日本アミノ酸学会第17回学術大会
  • [学会発表] 成長速度が異なる肉用鶏ヒナにおける代謝特性の解析2023

    • 著者名/発表者名
      片山英恵, 島元紗希, 井尻大地, 中島一喜, 友永省三, 大塚彰, 藤村忍
    • 学会等名
      日本アミノ酸学会第17回学術大会
  • [学会発表] 味覚センサ及び電子嗅覚システムによる清酒と鶏肉モデルのペアリング時の風味評価2023

    • 著者名/発表者名
      齋藤颯斗, 北村妃花莉, 島元紗希, 平田大, 山口智子, 藤村忍
    • 学会等名
      日本味と匂学会第57会大会
  • [学会発表] 鶏初期成長期における飼料用米給与が飼育成績と肉質に及ぼす影響2023

    • 著者名/発表者名
      杉本健太, 丸山慶朗, 島元紗希, 藤村忍
    • 学会等名
      第71回北信越畜産学会
  • [備考] 新潟大学研究者総覧

    • URL

      https://researchers.adm.niigata-u.ac.jp/html/895_ja.html

  • [備考] Researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/read0188823

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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