研究課題/領域番号 |
22K05972
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
増田 豊 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (80514728)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ゲノミック選抜 / 遺伝子型と環境の相互作用 / 遺伝的パラメータ / 乳用牛の健康 |
研究実績の概要 |
乳中の脂肪酸組成は、搾乳牛の飼料摂取と健康を反映する。特に乳腺上皮細胞で生合成されるde novo脂肪酸は粗飼料の利用性が高いときに、飼料や体細胞から移行するpreformed脂肪酸は、泌乳によるエネルギー不足の際に、それぞれ乳に多く分泌される。脂肪酸組成には、飼養形態(つなぎ、フリーストール、放牧など)の影響があり、遺伝要因も関与するとされる。本研究は、乳中脂肪酸組成に遺伝要因の関与がどの程度あるかを調査し、遺伝と飼養形態との相互作用の存在について解明する。日本のホルスタインから収集した、乳中の脂肪酸組成のフィールドデータを用いる。 2022年度において、乳量比de novo脂肪酸割合(DnM)、乳脂肪量比de novo脂肪酸割合(DnF)、乳脂肪量比preformed脂肪酸割合(PrF)のそれぞれについて、表現型値の分布、基礎統計量、泌乳曲線の形状を調査した。さらに、泌乳後日数を30日ごとに分けた各泌乳ステージにおいて、前述の3つの脂肪酸形質にかかわる系統的環境要因を特定した。それらの要因を含めた線形混合モデル解析により、それぞれの形質について、各ステージにおける遺伝率、およびステージ間の遺伝相関を推定した。各ステージにおける遺伝率は、いずれの形質においても中程度の値が推定された。また、遺伝相関は、ステージの間隔が離れるほど低くなったが、概ね中程度から1に近い値が推定された。ステージ1の遺伝率は他のステージにおける値よりも低く、他のステージとの遺伝相関もやや低い傾向にあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度には、表型的特性の調査を行った。乳中脂肪酸組成に関する表現型値の分布、基礎統計量、泌乳曲線の形状を明らかにし、系統的環境要因(固定要因)を特定した。また、泌乳後日数を30日ごとに分けた各泌乳ステージにおいて、乳中脂肪酸組成の遺伝率を推定した。ステージ間の遺伝相関も推定した。以上の解析は、当初の計画通りに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、以下の3つの分析を行う予定である。 まず、乳中脂肪酸組成と産乳・健康・繁殖に関する形質との遺伝相関を推定する。 続けて、飼養形態をつなぎ飼い、フリーストール、放牧に区分する。各飼養形態において測定された乳中脂肪酸組成を、それぞれ異なる形質とみなし、血縁関係に基づいて遺伝相関を推定する。また、相互作用がないと仮定したモデルから種雄牛の育種価を推定し、これが、どの飼養形態でも同一の能力値として発現するかを、統計モデルによって調査する。 さらに、ゲノミック育種価推定の一手法であるシングル・ステップ法を用いて、乳中脂肪酸組成のゲノミック育種価を推定する。 推定育種価の正確度は、交差検証によって算出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の直接経費では、データ提供機関への旅費を計上していたが、コロナウイルス感染防止の観点等から、旅行を取りやめてオンラインミーティングに移行したため、旅費を使用する機会がなかった。次年度においては、当初の予定通りに旅費を使用する予定である。
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