研究課題/領域番号 |
22K05977
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
西尾 元秀 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主任研究員 (10585970)
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研究分担者 |
井上 慶一 宮崎大学, 農学部, 教授 (30753917)
廣岡 博之 京都大学, 農学研究科, 教授 (60192720)
竹田 将悠規 独立行政法人家畜改良センター, 本所(企画調整部 技術グループ), 調査役・係長 (80775205)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 黒毛和種 / 機械学習 / ゲノミック評価 / 育種 / 枝肉形質 |
研究実績の概要 |
本研究では、ディープラーニングなどの機械学習を用いてこれまで考慮できなかった遺伝様式を反映させた新たな遺伝的能力評価法(ゲノミック評価法)を開発することを目的とした。鳥取県畜産試験場および家畜改良センターから黒毛和種肥育牛2,006頭について34,481個のSNPデータと枝肉6形質の成績を収集した。枝肉6形質を対象にして、現行のゲノミック評価法であるGBLUP法と昨年度開発したベイズ法、カーネル法、ブースティング法、畳み込みニューラルネットワーク法およびkinship-adjusted-multiple-loci(KAML)法の5つの機械学習を適用し、遺伝的能力の評価精度を比較した。遺伝的能力の評価精度は、6分割交差検証を実施し、それぞれの評価法によって得られた遺伝的能力評価値と観測値との相関係数から算出した。GBLUP法と比較して、枝肉重量ではKAML法の評価精度が5%、BMSではブースティング法の評価精度が4%、ロース芯面積ではカーネル法の評価精度が3%向上することが明らかになった。以上の結果から、形質に応じて適切な機械学習を適用することで、従来よりも遺伝的能力評価の精度を向上できることが示唆された。一方、畳み込みニューラルネットワーク法はすべての枝肉形質においてGBLUP法よりも評価精度が劣っていたため、育種利用することは難しいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的通り、黒毛和種の枝肉形質において機械学習を利用したゲノム情報による新たな遺伝的能力評価法の性能を検証した。特に3つの形質においては新たな手法による評価精度が従来法よりも向上することを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
実データにおける遺伝的能力の評価精度を正確に検証するためには、多くのデータを要する。今後は当初の予定通り黒毛和種の枝肉形質データ及び一塩基多型データを蓄積して、引き続きデータの拡充を図る。また、個々の枝肉形質に適した評価法を利用した場合の遺伝的改良量を明らかにする。機械学習を利用した新たな遺伝的能力評価の手法として5つの手法を開発したが、それら以外にも有用な計算手法があるかもしれない。今度は遺伝的能力評価手法としてサポートベクトル回帰などこれまで試してこなかった手法についても利用できる手法があれば採用し、その評価精度について検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張での打ち合わせの一部がZOOMによるものになり、一部の旅費が余った。余剰分は研究成果をまとめた論文投稿や英文校閲にあてる予定である。
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