研究課題/領域番号 |
22K05978
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
福永 航也 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (50506722)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ウシ / 乳房炎 / ゲノム / MHC / 遺伝的多様性 / WGS / CNV / ロングリードシークエンシング |
研究実績の概要 |
ウシのmajor histocompatibility complex(MHC)クラスⅡ遺伝子のBoLA-DRB3は牛白血病や乳房炎などと関連があることが報告されているが、その他のBoLAクラスII遺伝子では遺伝子間の相同性が極めて高度であるなどの問題から詳細なアリル情報が不足しており正確な関連を精査することができていなかった。そこで2022年度において127頭のホルスタインのゲノムDNAを用いてBoLA-DQA2 (DQA2)、BoLA-DQB (DQB2)、BoLA-DQA5 (DQA5)、BLA-DQB (DQB1)、LOC100848815 (DQA1)および BoLA-DRB3 (DRB3)におけるコピー数、アリル同定、さらに公的データベースに登録されている全ゲノムシークエンシング(WGS)データを参照ライブラリーとしたSNPアレイからのアリルインピュテーション法を確立した。2023年度において、このインピュテーション法の精度を検証したところ99.8%の一致率を示した。不一致検体を詳細に調べたところインピュテーション法のアリルが正解であった。そのため完全な参照ライブラリーを作成するために本研究で採取されたゲノムのロングリードシークエンシングを実施し、完全なバリアントデータベースの作成を目指した。またBoLA遺伝子の抗原提示部位に結合する乳房炎原因細菌である黄色ブドウ球菌のペプチドを同定するためドッキングシュミレーションによって行った。黄色ブドウ球菌のアミノ酸をそれぞれ9残基にランダムに切断しBoLAの6遺伝子との相互作用を解析した。その結果、BoLA-DRB3の抗原提示部位に結合する自由エネルギーが最も小さい9残基のアミノ酸が同定された。今後これらの手法ならびに参照ライブラリーを用いて、効率的に乳房炎抵抗性遺伝子の探索を行い新規防除法の開発を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロングレンジPCRを用いたロングリードシークエンシングを実装することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
MHC領域のシークエンシングの困難性のため研究領域として進捗が非常に遅い。申請者はヒトのMHC領域で主に用いられ革新的な結果をもたらしたシークエンシング手法とインピュテーション法をウシのゲノムのジェノタイピングに移植することで本課題だけでなく、ウシのMHC領域を研究しているすべての研究者に汎用性の高い手法を提供することを前年度から引き続き本研究の目的の1つとしている。結果としてNGSシークエンシング法、リアルタイムPCR法を用いたコピー数多型測定法、SNPアレイデータを用いたBoLAアリルのインピュテーション法、さらに本年度にはロングリードシークエンシング法も開発した。MHCのクラス1領域のシークエンシングを実施したがその正確性の検証が終わっていない。最終年度はこれらの正確性を検証し、IPD-MHCデータベースへ登録し、世界中の研究者にこれらのデータを使用可能にする。引き続き、ホルスタイン種だけでなくウシのすべての種のMHCゲノム構造を明らかにすることでウシのすべてのMHC領域を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
安価なロングリードシークエンシング法を開発したことで当初の計画より必要使用額が縮小した。そのため次年度に繰り越し、当初の計画にはなかったMHCクラス1のシークエンシングを行う。
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