研究課題/領域番号 |
22K05982
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
麻田 正仁 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 准教授 (40587028)
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研究分担者 |
渡邊 勇歩 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (40895893)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バベシア / ウシ / 赤血球 |
研究実績の概要 |
ウシの脳性バベシア症は、赤血球寄生原虫であるBabesia bovisによって引き起こされる致死的な病態であり、未だに有効な治療法は存在しない。B. bovisは寄生している赤血球を自らの生存に適した環境に改変しており、感染赤血球表面にはRidgeと呼ばれる突起物が形成され、そこに局在するVESA-1が脳性バベシア症の発症に深く関わる。申請者らのグループはVESA-1の赤血球内輸送機構に着目し、VESA-1の輸送に関わる分子VEAPを初めて明らかにした。その一方で、VEAPはVESA-1と直接相互作用しておらず、脳性バベシア症に繋がる感染赤血球改変分子の多くは未同定である。本研究は、VESA-1の赤血球内輸送並びにRidgeの形成に関わる分子の同定・機能解析を行うとともに、脳性バベシア症治療法の開発を目指した化合物探索を行うことを目的としている。 2023年度も引き続きSBP(Spherical body protein)に着目して解析を行った。SBPはSBP1~4が知られ、バベシア感染赤血球の膜近傍に局在するため、脳性バベシア症やRidge形成に関わることが推測されていたが、それを裏付けるデータは殆ど無かった。昨年度、glmSリボザイム配列を用いたSBP3ノックダウン原虫を作製したため、今年度はその表現型解析を行った。まずSBP3ノックダウン原虫の増殖能を調べたところ、原虫の増殖が有意に低下し、バベシア原虫の生存に必須の分子であることが示唆された。また、電子顕微鏡像を観察したところ、ノックダウン原虫ではRidgeがほとんど形成されていないことが明らかとなった。さらに、SBP3ノックダウン原虫感染赤血球を用いてウシ脳毛細血管内皮細胞への接着試験をおこなったところ、接着性の有意な低下がみられた。以上の事から、SBP3がRidge形成に関わる分子であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SBP3ノックダウン原虫の表現型解析から、SBP3がRidgeの形成に関わる分子である事が証明され、本研究の目的の1つが達成されたため。
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今後の研究の推進方策 |
SBP3と相互作用する分子の同定を行う予定である。また、SBP3を標的とする治療薬開発に繋がるようなデータを取得する予定である。さらに、昨年度SBP4ノックダウン原虫も得られているため、表現型解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた質量分析の受託解析がまだ行われていないため、次年度使用額が生じている。2024年度に質量分析用のサンプルを調整し、解析を行う予定である。
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