研究課題/領域番号 |
22K05984
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永田 奈々恵 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任講師 (80390805)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イヌ / アトピー / 皮膚炎 / 脂質 |
研究実績の概要 |
イヌ皮膚炎の約10-15%を占めるイヌアトピー性皮膚炎(canine atopic dermatitis: CAD)は、皮膚バリア機能の低下やIgE抗体を産生しやすい体質などの遺伝的・環境的要因を原因とした炎症性のアレルギー性皮膚疾患であり、慢性的なかゆみを伴う。しかし、その病因が複雑であることや、併発症による皮疹の変化や犬種により病態が異なることに加え、食物アレルギーなどCADに似た症状を示す他の疾患が存在するため、CADを確定診断できる検査法は確立していない。本研究では、さまざまな症状のアトピー性皮膚炎や他の疾患を発症したイヌの尿中に排泄される脂質代謝物を網羅的に解析し、CADに特徴的な脂質代謝物を同定し、その脂質代謝物に対する抗体を作製し、酵素免疫測定法による評価系を確立することを目的とする。今年度は、これまでに採取した健康犬の尿検体と食物アレルギー単独、アトピー性皮膚炎単独、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎を併発した犬の尿検体について、質量分析装置による尿中脂質代謝物の網羅的解析に取り組んだ。しかし、集まった検体数が少ないため、CADに特徴的な脂質代謝物を特定には至っていない。そこで、アトピー性皮膚炎患者やアトピー性皮膚炎モデルマウスの尿中で増加することが報告されている脂質代謝物も候補脂質に加え、これらの脂質代謝物に対する抗体の作製に取り組んだ。具体的には脂質代謝物とキャリアタンパク質を結合させ、アジュバントでミセル化した後にマウスに複数回免疫した。4~8週間後、得られたB細胞とマウス骨髄腫細胞をポリエチレングリコール法で細胞融合してハイブリドーマを得た。その中からELISAにおいて抗原に用いた脂質代謝物に反応するクローンのスクリーニングを進めている。イヌの尿検体の収集は今後も継続していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに健康犬、食物アレルギー単独、アトピー性皮膚炎単独、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎を併発した犬の尿検体を質量分析装置により、尿中脂質メディエーターの網羅的解析を進めた。しかし、集まった検体数が少なく、CADに特徴的な脂質代謝物を特定には至っていない。また、アトピー性皮膚炎患者やアトピー性皮膚炎モデルマウスの尿中で増加することが報告されている脂質代謝物も候補脂質に加え、抗体の作製に取り組んでいるが、候補抗体の取得には至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も健康犬、食物アレルギー単独、アトピー性皮膚炎単独、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎を併発した犬の尿検体の収集を継続し、尿中脂質の網羅的解析を行うことで、CADに特徴的な脂質代謝物の探索を行う。さらに、候補となる脂質代謝物の免疫と候補クローンのスクリーニングを進め、候補となる脂質代謝物に対する抗体を作製し、酵素免疫測定法による評価系を確立していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
尿中に含まれる脂質の解析を中心に実験を行ったことや、マウスに免疫を行っても抗体価が上がらない実験回があったため、脂質代謝物に対する抗体を作製するための実験費用が予定額以下になった。 基本的には2023年度と同様の使用を計画している。通常汎用される試薬等の費用に加えて、マウスの繁殖飼育費用として使用する予定である。また、研究成果発表のための学会参加の出張費、さらに論文投稿料、印刷代等の費用として使用する予定である。
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