研究課題/領域番号 |
22K05987
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
日暮 泰男 山口大学, 共同獣医学部, 助教 (90580283)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 身体運動 / 動物 / 哺乳類 / 脊椎 / 生体医工学 / バイオメカニクス / 材料試験 |
研究実績の概要 |
哺乳類の身体運動と脊椎の機械的性質との関係の解明を目的とする本研究課題において、本年度の重要な研究成果は3つある。1)昨年度まで学外で行っていたイヌのアジリティに関する解析の成果を、国際学術雑誌であるMammal Studyに発表した。2)ネコの高速走行における脊椎の運動を慣性センサにより計測した。3)哺乳類の脊椎にねじり破壊試験を行う試験機と試験法を確立した。 1)学術雑誌Mammal Studyに発表したこの研究では、イヌがターン動作を行うときの頭部と体幹の傾きを慣性センサにより測定した。ターン動作における頭部の傾きは体幹の半分程度に抑えられた。この結果から、効率的なターン動作を行うために体幹は大きく傾けられるが、良質な視覚情報および前庭感覚情報を得るために頭部の傾きが抑えられることが示唆された。 2)ネコがウォーク、トロット、ギャロップという3種類の歩容を行うときの脊椎の屈曲・伸展の運動域を慣性センサにより測定した。最も高い速度域で行われるギャロップでは、ウォークやトロットにくらべて、屈曲・伸展の運動域が顕著に広かった。さらに、脊椎の伸展のタイミングは後肢の伸展とおおむね一致していた。これらの結果から、ネコにおける高速走行の生成に脊椎の運動が大きく寄与していることが示唆された。 3)材料試験の中で破壊試験からは、材料の機械的性質について貴重な知見が得られる。哺乳類の脊椎にねじり破壊試験を行う試験機と試験法を確立したことにより、今後は、哺乳類の脊椎が軸回旋においてどのくらいのトルクに耐えられるのか、最大可動域はどのくらいか、弾性はどのくらいかを客観的に評価できるようになった。また、材料試験に用いるために、ネコ、イヌ、ウサギ、ブタ、ウシ、シマオイワラビー、ワオキツネザル、アカゲザル、テナガザルなどの多数の検体を入手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画を実施しつつ、新たな研究内容にも取り組むことができている。本年度は、とくに、昨年度学外で行ったイヌのアジリティに関する解析の成果を学術論文として発表できた。ネコの高速走行における脊椎の運動を慣性センサを用いて計測した。哺乳類の脊椎にねじり破壊試験を行う試験機と試験法を確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初計画を基本としつつ、本研究課題を深めるような新たな研究内容についても検討していく。 行動学的研究としては、学内で飼育しているイヌとネコの身体運動をビデオ分析および慣性センサ、フォースプラットフォーム法、表面筋電図法といった種々の手法を用いて計測する。 解剖学的研究としては、ネコやそれと同程度の体サイズの哺乳類を対象として、脊椎の材料試験を行い、脊椎の機械的性質を明らかにする。また、哺乳類の検体の入手を継続する。 最終的に、行動学的研究と解剖学的研究の成果を統合し、哺乳類の身体運動と脊椎の機械的性質との関係を明らかにする。
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