研究課題/領域番号 |
22K05988
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
脇谷 晶一 宮崎大学, 農学部, 講師 (40621800)
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研究分担者 |
保田 昌宏 宮崎大学, 農学部, 教授 (10336290)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 黒毛和種子牛 / 胸腺 / 急性退縮 / 細胞増殖 / 胸腺皮質上皮細胞 / T細胞 / マクロファージ / IARS異常症 |
研究実績の概要 |
前年度のDNAマイクロアレイ解析で子牛胸腺の急性退縮との関連が疑われた遺伝子についてリアルタイムRT-PCRによる再検証を実施した。廃用黒毛和種子牛の胸腺を検体とし、病理組織学的分類に基づいて各種遺伝子発現量を比較したところ、細胞増殖関連遺伝子PCNA、KIFC1の発現量が正常な胸腺と比較して急性退縮4期の胸腺で低かった。胸腺皮質上皮由来分子の遺伝子発現量を調べたところ、胸腺皮質上皮細胞マーカー遺伝子Ly51/ENPEPの発現量が急性退縮2期から4期にかけて減少していた。T細胞の成熟に関わるPSMB11とPRSS16の発現量は急性退縮4期群でそれぞれ正常群の10%と18%であったが、統計学的な違いは認められなかった。PSMB11とPRSS16に対する免疫組織化学を実施したところ、単独の抗体を用いた染色では皮質上皮細胞におけるシグナルを特定できなかった。そこでサイトケラチンとの二重蛍光法によってPSMB11とPRSS16の局在を確認したが、サイトケラチン陰性細胞のみにPSMB11とPRSS16のシグナルが認められた。 前年度に明らかにした胸腺急性退縮の進行に伴うCleaved Caspase-1の増加に関連して、急性退縮初期の胸腺を対象にF4/80抗体を用いた免疫組織化学を実施し、胸腺皮質と髄質におけるマクロファージの定量化を行った。Cleaved Caspase-1陽性細胞率とF4/80陽性細胞率の間に相関は認められず、急性退縮に伴うCaspase-1の活性化がマクロファージの増加に依存しないことが示唆された。 ウシIARS異常症モデルマウスC57BL/6J-Iars<em2(V79L)Nsas>にLPSを腹腔内投与したところ、胸腺内のカスパーゼ3の活性化が野生型より顕著に認められ、ウシIARS異常症ではLPS誘導性胸腺退縮が亢進される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度はDNAマイクロアレイ解析の結果の再検証、PSMB11とPRSS16に対する免疫組織化学、廃用子牛の血中エンドトキシンの測定、マクロファージに対する免疫組織化学、ウシIARS異常症モデルマウスのWCS胸腺病態モデルとしての有用性の検討を実施する予定であった。 DNAマイクロアレイ解析の結果の再検証は計画通りリアルタイムRT-PCRを実施し、DNAマイクロアレイ解析の結果の正当性を確認することができた。PSMB11とPRSS16に対する免疫組織化学は当初の予想と異なり、正常胸腺組織においても上皮細胞における局在を確認することができなかった。廃用子牛の血中エンドトキシンの測定は解剖室の改修に伴って代替え施設を確保できなかったため、廃用子牛の剖検自体を休止せざるを得なかった。 マクロファージに対する免疫組織化学は計画通りに実施し、前年度に確認された急性退縮に伴うCleaved Caspase-1陽性細胞率の増加がCaspase-1の活性化によるものであることが示唆された。ウシIARS異常症モデルマウスのWCS胸腺病態モデルとしての有用性に関しては、LPS投与によってWCSと類似した胸腺の病態変化が起こることが明らかになった。 このように概ね予定通りの計画で実施できたが、予期せぬ実験結果や実施環境の変化によって全体的にはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に実施できなかった廃用子牛の血中エンドトキシンの測定については2024年5月より剖検を再開し、血中エンドトキシンと胸腺の病理組織学的状態の関連を明らかにし、子牛の胸腺の病態に敗血症状態が関わっているのかを評価する。 2023年度に明らかにしたウシIARS異常症マウスにおけるLPS誘導性胸腺退縮の亢進について、定量的な評価を実施して多角的に再現性の確認を実施する。 T細胞の成熟に関わるPSMB11とPRSS16の発現について、廃用子牛の検体を増加させるのに加えて、WCS胸腺病態モデルを用いて、病態進行に伴った動態を明らかにする。 廃用子牛胸腺の病理組織学的異常がT細胞の成熟に与える影響について、成熟T細胞抗原の発現量を指標とした組織学的解析により評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解剖室の改修に伴った代替え施設の確保が当初の予定通り確保できなかったため、2023年度の計画の内、剖検を要するものを実施できず、代わりに2024年度の計画の一部を先行実施した。よって、当初予定額が2024年度より大きかった2023年度の額に次年度使用額が生じた。この2023年度に実施できなかった計画は2024年度に実施する予定であるため、研究期間全体に対する影響は生じていない。
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