研究課題/領域番号 |
22K06003
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
平井 卓哉 宮崎大学, 農学部, 教授 (60321668)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 豚 / PRRS / PCV2 / NALT / 病態解析 |
研究実績の概要 |
豚サーコウイルス2型(PCV2)は、かつて多くの農場で豚サーコウイルス関連疾病や、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)との複合感染による豚呼吸器複合病を引き起こし、養豚業界に深刻な打撃を与えた。豚サーコウイルス関連疾病の診断基準として、臨床症状、遺伝子検出、病理学的診断が挙げられる。PCV2ワクチンの普及により本疾病は減少したものの、不顕性感染は継続してみられ、PCV2感染が増体や呼吸器病に影響を及ぼすことが疑われている。鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)は上部気道における生体防御に重要であり、同時にマクロファージを標的とするPCV2およびPRRSVの増殖部位となる。本年度では、不顕性感染豚のNALTにおける病理組織学的検査およびin situ hybridization (ISH)法によるPCV2およびPRRSVの検出により、豚呼吸器複合病の発生機序について考察した。 宮崎県内の農場から、発育不良や呼吸器症状を呈した100~108日齢の肥育豚を6頭剖検に供した。鼻咽頭ぬぐい液、NALTや肺など各種臓器を採材し、リアルタイムPCR検査、組織学的検査および ISH法を実施した。 NALTにおけるリアルタイムPCRにて全症例でPCV2およびPRRSVの感染が確認された。組織学的検査では、NALT粘膜上皮の変性、好中球浸潤、濾胞内のリンパ球減少やマクロファージ増生がみられた。ISH法では全症例でPCV2がリンパ濾胞内に、4症例でPRRSVが陰窩周囲に陽性シグナルが検出された。ISH法を用いた二重染色では、2症例において両ウイルスの陽性シグナルが、一部の領域では各シグナルが同一の細胞に近接して観察された。肺で両ウイルスの感染と重度の肺炎が認められた。 本研究では不顕性感染豚のNALTにおけるPCV2およびPRRSVの増殖により鼻咽頭炎、さらに豚呼吸器複合病に進展する可能性を示した。リンパ組織に特徴病変がみられず、豚サーコウイルス関連疾病と診断できない場合においても、PCV2感染の影響を軽視できないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度ではPCV2不顕性感染豚のNALTにおいてISH法によりPCV2およびPRRSVの同時検出に成功した。PCV2不顕性感染豚にPRRSウイルスが感染することで豚呼吸器複合病に進展する可能性を示す研究内容であり、当初計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
順調に進捗しているので、今後も計画通りに研究を進める。 2024年度にはPRRSウイルスのレセプター分子として報告されているCD163陽性マクロファージのNALTにおける分布とウイルス陽性細胞の分布を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画以上に研究が順調に進展しているため。追加研究項目として、両ウイルスの増殖をNALTと扁桃で比較する予定である。
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