研究課題/領域番号 |
22K06006
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
井尻 萌 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 助教 (20836233)
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研究分担者 |
川口 博明 北里大学, 獣医学部, 教授 (60325777)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 豚 / ストレス / 機能性糖質 |
研究実績の概要 |
豚は飼養時の不適温度や密飼いおよび出荷時の輸送等の様々なストレスを受け、健康状態や肉質に影響を及ぼすことが知られている。ストレスの要因やその影響は多岐にわたるが、豚で見られる代表的な病態として、豚ストレス症候群が良く知られている。本症の発生には骨格筋リアノジンレセプター遺伝子(RYR1)の変異が深く関連していると考えられている。 令和4年度は鹿児島県内で飼養されている3品種(黒豚、奄美島豚、白豚)を対象にRYR1の変異遺伝子保有状況について調査した。豚ストレス症候群はPSE豚肉と言われる肉質劣化の原因ともなり、大きな経済的損失を招くことが知られているが、これまで申請者らが行った豚品種別のPSE肉発生状況の調査において特定の品種でPSE豚肉の発生が多い傾向が見られている。今年度のRYR1の調査結果からも品種による変異遺伝子保有状況の違いがストレス耐性や肉質に影響している可能性が示唆された。現時点では調査対象の品種や農場に偏りがあるため、引き続き調査を継続し、検証を進める予定である。 また令和5年度以降はストレス緩和効果が期待される天然由来機能性糖質の効果を検証する予定としているため、この事前準備として、本物質の投与量や投与方法、評価項目の設定のための基礎試験(肥育豚への機能性糖質投与試験)を行った。試験を通じて豚のストレスを評価する血中および唾液中のバイオマーカーや調査項目を設定するとともに、RYR1の遺伝子型や機能性糖質の投与がこれらバイオマーカーに及ぼす影響についても検証し、令和5年度以降の試験の基礎データとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RYR1変異遺伝子の保有状況調査は対象農場が特定の農場・品種に偏っており、品種間での比較検討は十分とは言えないものの、一定のデータは収集されており、次年度以降の調査対象農場についても目処がたっている。また次年度以降の機能性糖質の効果検証試験の予備検討も実施済であり、おおむね順調に遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
RYR1変異遺伝子の保有状況の品種間での比較検討は十分とは言えないため、来年度も引き続き調査対象農場を拡大して調査を進める予定としている。 また今年度の予備検討結果を元に機能性糖質添加飼料の投与試験を実施する。実際の飼養環境でおこるストレスの評価およびこれらのストレスの影響の緩和方法の確立に向けて、異なる生産ステージ(分娩時、離乳時)や飼養温度(暑熱期、寒冷期)におけるストレス状態の評価を進めるとともに、これらの状況下での機能性糖質のストレス緩和効果の検証を進めていく予定である。
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