研究課題/領域番号 |
22K06009
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
岡田 宗善 北里大学, 獣医学部, 准教授 (30453509)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD) / IV型collagen / Matricryptins / 弁間質細胞(VICs) / 伸展刺激 |
研究実績の概要 |
イヌに好発する粘液腫様僧帽弁疾患(myxomatous mitral valve disease; MMVD)の弁変性を制御する治療法は未だ開発されていない。本研究は新たな創薬標的としてのIV型collagen由来matricryptinsの可能性に着目し、その僧帽弁変性における発現・局在の変化や役割を解明することを目的とする。本年度は1)ラット僧帽弁より弁間質細胞(valvular interstitial cells; VICs)を単離培養し、IV型collagen α1鎖由来matricryptinsであるarrestenの細胞機能に及ぼす影響を検討した。また2)細胞伸展刺激システムを用い、同細胞の形態やIV型collagen由来matricryptins発現に及ぼす伸展刺激の影響を検討した。さらに3)ラット僧帽弁器官培養標本におけるtransforming growth factor (TGF)-β1誘導性弁変性における伸展刺激の役割を検討した。その結果、1) Arrestenはラット僧帽弁由来VICsの遊走に影響を及ぼさなかった。2)ラット僧帽弁由来VICsは一定の伸展刺激を加えることによりα-smooth muscle actin (α-SMA)発現が増加した活性型VICsへと分化するが、伸展刺激の増加に伴い細胞死が誘導されることが明らかとなった。また伸展刺激はラット僧帽弁由来VICsにおいてarrestenやIV型collagen α2鎖由来matricryptinsであるcanstatinの発現を増加させる傾向を示した。3)昨年度、シリコンシートに固定し伸展刺激を与えた状態のラット僧帽弁器官培養標本においてTGF-β1が肥厚などの弁変性を誘導することを明らかにした。しかしながら同標本を未固定、すなわち伸展刺激のない状態で培養し、TGF-β1で刺激しても肥厚などの弁変性は認められなかった。このことから、TGF-β1などの液性因子の刺激だけでなく伸展などの機械的刺激が僧帽弁変性に必要なのではないかと考えられた。これら成果の一部を学術集会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット僧帽弁由来VICsの形態やIV型collagen由来matricryptins発現の変化、そして僧帽弁の変性における伸展刺激の重要性を示唆する結果が得られた。また得られた成果の一部を学術集会において発表することができたため、本研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
IV型collagen由来matricryptinsがラット僧帽弁由来VICsの機能(増殖、遊走や細胞外基質産生能など)に及ぼす影響を引き続き検討する。また生体の僧帽弁には伸展刺激だけでなく圧刺激やせん断応力などの機械的刺激も加わっているため、ラット僧帽弁由来VICsや弁内皮細胞(valvular endothelial cells; VECs)にこれら機械的刺激を加えた際のIV型collagen由来matricryptins発現の変化とその調節機構を検討する。さらにラット僧帽弁器官培養標本やセロトニン誘発弁変性モデルラットを用い、僧帽弁の変性におけるIV型collagen由来matricryptins発現の変化やその役割を引き続き検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度はラット僧帽弁由来VICsを用いたin vitroの検討を中心とし、動物購入費用が抑えられたため。 (使用計画)次年度においては、主に試薬や実験動物の購入など物品費に支出する予定である。
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