骨格筋細胞を用いた研究では安定した増殖および分化が得られることが必須であり、またグルココルチコイドの添加により筋萎縮を誘導した際に脱落する細胞が多い場合、評価の対象となる細胞にはバイアスが生じるため、実際に骨格筋で生じる変化を反映しない可能性がある。そこで、培養イヌ骨格筋細胞を用いたグルココルチコイド筋萎縮の病態モデルとして、より精度の高い結果を得るために細胞培養および分化誘導に関する改善を行った。特に、細胞の足場となるコラーゲンゲルの厚さの違いによる細胞生存率、分化効率の違いについて検討した。コラーゲンゲルを使用しない条件と比較して、コラーゲンゲルを使用した条件では細胞生存率が上昇し、細胞形態およびミオシン重鎖発現から評価した分化効率に改善がみられた。コラーゲンゲルの厚さについては0.5~2.0mmの範囲で結果に大きな違いはみられなかった。ゲル上で培養したイヌ骨格筋細胞はプラスチックウェルおよびコラーゲンコートで培養した場合よりもより良好な増殖および生存率を示し、また分化の状態も良好となった。コラーゲンゲルの厚さについては0.5mm以上であれば十分な効果が得られており、培養条件として適切であると考えられた。この培養条件を用いてデキサメサゾンによる筋萎縮を誘導した際にも脱落する細胞はコラーゲンゲル使用時に少なく、グルココルチコイド筋萎縮の病態を評価する上でより適切であると考えられた。
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