研究課題/領域番号 |
22K06031
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
盆子原 誠 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (50343611)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肥満細胞腫 / SHP2 / SHP099 |
研究実績の概要 |
本研究は、1)変異KITを持つ肥満細胞腫において、SHP2の阻害はTK阻害に代わる治療戦略となるか2)TK阻害剤に耐性を獲得した肥満細胞腫に対して、SHP2の阻害は耐性克服法となるかを明らかにすることを目的とした。そこで本年度は、変異KITを有する犬の肥満細胞腫細胞株(TK阻害剤ナイーブ株およびTK阻害剤耐性株)および野生型KITを持つ犬の肥満細胞腫細胞株の細胞増殖に対するSHP2阻害剤SHP099の影響を検討した。SHP099は野生型KITを持つ細胞株に対してはほとんど増殖抑制効果を示さなかったが、変異KITを有する細胞株に対しては用量依存性に細胞増殖を抑制した。これら変異KITを有する細胞株の中でもTK阻害剤ナイーブ株では強い細胞増殖抑制効果が見られた。一方、TK阻害剤耐性株では、SHP099による細胞増殖抑制は見られるもののTK阻害剤ナイーブ株ほどの強い効果ではなかった。TK阻害剤耐性株のSHP099感受性については、耐性化メカニズム(KIT二次変異、KIT過剰発現)による違いはほとんど見られなかった。そこで、TK阻害剤耐性株に対してTK阻害剤とSHP099を併用して作用させたところ、全てのTK阻害剤耐性株においてTK阻害剤ナイーブ株と同程度のTK阻害剤感受性が認められた。これらのことから、 SHP2の阻害は変異KITを持つTK阻害剤ナイーブな肥満細胞腫に対して新たな治療戦略となる可能性が考えられた。また、KITの二次変異あるいは過剰発現によりTK阻害剤耐性を獲得した肥満細胞腫では、SHP2の阻害剤を併用することでTK阻害剤の感受性が増加する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は主に細胞レベルでの解析を行った。結果として、細胞レベルでは仮説と矛盾しない結果が得られ、本研究のコンセプトと仮説、また方向性については今のところ適切と考えられた。細胞内のシグナル伝達系の変化については、すでに解析に着手しているが、まだ十分な結果は得られていない。このシグナル伝達系の解析については、当初より時間を要することは想定されており、特段の問題とは考えていない。以上より、本研究についてはおおむね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は細胞内シグナル伝達系の解析に力点を置く予定である。これまでのプレリミナリーな解析から、特定のシグナル経路の変化については再現性が得にくいことが分かってきた。先ずは実験系の安定化を検討し、その上で細胞のTK阻害剤とSHP099に対する反応について、細胞内で生じるイベントから説明ができるよう解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、コロナの影響により細胞内シグナル伝達系の解析が多少遅れ、当初予定していた抗体の購入が行われなかったためである。次年度使用額については、これらの抗体の購入に充てる予定である。
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