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2023 年度 実施状況報告書

分子糊を用いたKIT変異陽性犬肥満細胞腫の新規治療戦略の構築

研究課題

研究課題/領域番号 22K06031
研究機関日本獣医生命科学大学

研究代表者

盆子原 誠  日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (50343611)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード肥満細胞腫 / SHP2 / SHP099
研究実績の概要

2022年度の研究において、src homology two domain-containing phosphatase 2(SHP2)阻害剤であるSHP099は変異KITを有するチロシンキナーゼ(TK)阻害剤ナイーブ肥満細胞腫細胞株に対して強い細胞増殖抑制効果を示すことが明らかになった。また、TK阻害剤耐性肥満細胞腫株に対しては、SHP099単独では強い増殖抑制効果は見られなかったが、TK阻害剤と併用することで強い増殖抑制効果が得られることが示された。そこで2023年度は活性化変異であるKIT c.1523A>Tを有しTK阻害剤にナイーブな犬肥満細胞腫株化細胞cVI-MCを用いて、SHP099のKIT/pKITならびに下流シグナル経路(ERK、pERK、AKT、pAKT、STAT3、pSTAT3)におよぼす影響を解析した。cVI-MCは定常状態でKITおよびERKが活性化しており、AKTとSTAT3の活性化は見られなかった。SHP099はcVI-MCのKITリン酸化にはほとんど影響を与えずERKの活性化を抑制した。このことからSHP099はcVI-MCにおいてKIT下流のSHP2を阻害することでERKの活性化を抑制したと考えられた。一方、TK阻害剤ナイーブなcVI-MCでは、TK阻害剤イマチニブおよびトセラニブの効果(KITおよびERKリン酸化の抑制)に対するSHP099の上乗せ効果は見られなかった。SHP099は変異KITを有する肥満細胞腫細胞に対して、TK阻害剤とは異なるメカニズムでERK活性化を抑制し細胞増殖抑制を引き起こすことから、TK阻害剤に代わる新たな治療戦略となる可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は主に細胞内シグナルの解析を行った。この結果は、2022年度に得られたTK阻害剤ナイーブ犬肥満細胞腫株化細胞に対するSHP099の細胞増殖抑制のメカニズムを説明できるものと考えられた。このため、おおむね順調に進展していると評価した。一方、TK阻害剤に耐性を獲得した肥満細胞腫細胞におけるSHP099の作用については、条件設定を行っている段階であり結果は得られていない。しかしながら、ある程度の条件設定は終わっており、進捗状況に問題はないと考えている。

今後の研究の推進方策

2024年度は、主にTK阻害剤に耐性を獲得した肥満細胞腫細胞におけるSHP099の作用について解析を進める予定である。しかしながら、これまでのプレリミナリーな解析から、TK阻害剤に耐性を獲得した肥満細胞腫細胞では下流のシグナル経路に変化が生じている可能性が生じており、TK阻害剤ナイーブな細胞とは異なる解析アプローチが必要かもしれない。それも踏まえた上で、TK阻害剤耐性肥満細胞腫細胞におけるKITや下流シグナル経路の活性化におよぼすSHP099の影響を検討する。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じたのは、コロナの影響が残ったため細胞内シグナル伝達系の解析が多少遅れ、その結果、抗体や試薬などの消耗品の購入が後ろ倒しになったためである。これらの消耗品は今年度購入する予定であり、特段の問題はない。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Whole exome and transcriptome analysis revealed the activation of ERK and Akt signaling pathway in canine histiocytic sarcoma2023

    • 著者名/発表者名
      Asada H, Tani A, Sakuma H, Hirabayashi M, Matsumoto Y, Watanabe K, Tsuboi M, Yoshida S, Harada K, Uchikai T, Goto-Koshino Y, Chambers JK, Ishihara G, Kobayashi T, Irie M, Uchida K, Ohno K, Bonkobara M, Tsujimoto H, Tomiyasu H.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: 8512

    • DOI

      10.1038/s41598-023-35813-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Establishment of a <scp>BRAF V595E</scp>‐mutant canine prostate cancer cell line and the antitumor effects of <scp>MEK</scp> inhibitors against canine prostate cancer2023

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Masanori、Onozawa Moe、Watanabe Shiho、Nagashima Tomokazu、Tamura Kyoichi、Kubo Yoshiaki、Ikeda Akiko、Ochiai Kazuhiko、Michishita Masaki、Bonkobara Makoto、Kobayashi Masato、Hori Tatsuya、Kawakami Eiichi
    • 雑誌名

      Veterinary and Comparative Oncology

      巻: 21 ページ: 221~230

    • DOI

      10.1111/vco.12879

    • 査読あり
  • [学会発表] 犬の扁桃扁平上皮癌株化細胞におけるアファチニブの増殖抑制効果とその作用機序の解析2023

    • 著者名/発表者名
      宮本良, 田村恭一, 盆子原誠
    • 学会等名
      獣医がん分子生物学研究会
  • [備考] 日本獣医生命科学大学大学院・獣医病態解析検査学

    • URL

      https://www.nvlu.ac.jp/graduate/002-014.html

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公開日: 2024-12-25  

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