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2022 年度 実施状況報告書

雌雄の生殖細胞の性分化を推進させるクロマチンリモデリング複合体の解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K06046
研究機関北里大学

研究代表者

木村 透  北里大学, 理学部, 教授 (50280962)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード有性生殖 / 配偶子形成 / 性分化 / 減数分裂 / de novo DNAメチル化 / クロマチンリモデリング / SWI/SNF複合体 / 転写因子
研究実績の概要

生殖は、生命を定義づける生命現象の一つである。有性生殖を行う生物では、雌雄特異的な配偶子(精子と卵)を産生することで、次世代にゲノムおよびエピゲノム情報を継承する。従って、生殖細胞の性分化機構の解明は、生命科学において、特にその中でも、発生生物学・生殖医療において、極めて重要な研究課題である。
哺乳類では、胎仔期において、性的に未分化な始原生殖細胞が、メスでは一次卵母細胞へ、オスでは前精原細胞へ分化することで、性分化が開始する。我々は、SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体を欠損したマウスの始原生殖細胞では、雌雄両方の生殖細胞において、この性特異的な分化が正常に開始しないという知見を発表してきた。本研究課題では、「SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体が、メスでは減数分裂関連遺伝子群、オスではde novo DNAメチル化関連遺伝子群からポリコーム抑制複合体を除去し、次いで、これらの標的遺伝子群への雌雄特異的な転写因子のAccessibilityを上昇させることで、性特異的な転写リプログラミングを誘導する」というモデルを検証する。この研究を通して、メスの性分化を推進する転写因子(STRA8やMEIOSIN)が誘導される機構や、これらの転写因子が標的遺伝子(減数分裂関連遺伝子)を活性化する機構を解明する。さらに、オスにおいては、性分化を推進する転写因子がいまだに同定されていないが、その候補となる転写因子の生理的および分子生物学的な機能を解析することで、オスへの性分化を開始させる分子機構を明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度は、SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体が、メスの性分化を開始させる分子機構の一端を解明することができた。メスでは、性的に未分化な始原生殖細胞において、100種類以上の減数分裂関連遺伝子の発現が誘導されることで、一次卵母細胞への分化が始まる。これらの遺伝子には、始原生殖細胞のときに、ポリコーム複合体により転写が抑制されている遺伝子群と、ポリコーム複合体による抑制を受けない遺伝子群が存在する。
本研究では、RNA-Seq法とATAC-Seq法を用いることで、(1) SWI/SNF複合体は、ポリコーム複合体により抑制を受ける遺伝子群のプロモーター領域をオープンな構造にリモデリングすること(SWI/SNF複合体依存的にプロモーターがオープンになる遺伝子群)、(2) ポリコーム複合体により抑制を受ける遺伝子の中には、減数分裂遺伝子群のマスター転写因子をコードするMeiosin遺伝子があること、(3) SWI/SNF複合体は、Meiosin遺伝子の転写活性化を介して、ポリコーム複合体による抑制を受けない遺伝子群(SWI/SNF複合体がなくてもプロモーターがオープンになる遺伝子群)の活性化も制御することを明らかにした。この成果は、英文学術誌に発表し(Ito et al., Genes to Cells 28(1):15-28, 2023)、国内の学会発表も行った。

今後の研究の推進方策

オスでは、性的に未分化な始原生殖細胞において、de novo DNAメチル化関連遺伝子群などの発現が誘導されることで、前精原細胞への分化が始まる。RNA-Seq法とATAC-Seq法を用いた解析から、de novo DNAメチル化関連遺伝子群についても、(1) ポリコーム複合体により抑制を受ける遺伝子群は、SWI/SNF複合体依存的にプロモーターがオープンになること、(2) SWI/SNF複合体が欠損すると、SWI/SNF複合体非依存的にプロモーターがオープンになる遺伝子群の発現が誘導されないことが、予備的知見として得られている。このことは、オスにおいても、SWI/SNF複合体依存的にプロモーターがオープンになる遺伝子の中に、de novo DNAメチル化関連遺伝子群のマスター転写因子をコードする遺伝子が含まれることを示唆している。現在、このマスター転写因子の候補遺伝子をいくつか得ており、今後はこれらの遺伝子を欠損したマウスを作製し、そのマウスにおいてオスの性分化が正常に開始するかどうかを調べることで、オスの性分化を推進する転写因子(群)の同定を試みる。メスにおいては、STRA8やMEIOSINなどのマスター転写因子が既に同定されているが、オスの性分化に関与するマスター転写因子は同定されていないので、生殖細胞性分化の研究において大きく貢献できると考えている。

次年度使用額が生じた理由

2022年度は、すでに取得していたRNA-SeqやATAC-Seqのデータ解析、公共データベースに登録されているChIP-Seqなどドライの解析を中心に行ったため、次年度使用が生じた。2023以降に、ノックアウトマウスの作製・交配・維持、これらのマウスを用いたRNA-Seq解析、ATAC-Seq解析、ChIP-Seq解析などに、繰り越した予算を使用する予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Switching defective/sucrose non-fermenting chromatin remodeling complex coordinates meiotic gene activation via promoter remodeling and Meiosin activation in female germline.2023

    • 著者名/発表者名
      Ito T, Ohta M, Osada A, Nishiyama A, Ishiguro KI, Tamura T, Sekita Y, and Kimura T
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 28 ページ: 15-28

    • DOI

      10.1111/gtc.12990

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Genetic variation in the Y chromosome and sex-biased DNA methylation in somatic cells in the mouse.2023

    • 著者名/発表者名
      Batdorj E, AlOgayil N, Galvez JH, Zhuang QK, Bauermeister K, Nagata K, Kimura T, Ward M, Taketo T, Bourque G, and Naumova AK
    • 雑誌名

      Mammalian Genome

      巻: 34 ページ: 44-55

    • DOI

      10.1007/s00335-022-09970-z

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Spatiotemporal changes of tissue glycans depending on localization in cardiac aging.2023

    • 著者名/発表者名
      Itakura Y, Hasegawa Y, Kikkawa Y, Murakami Y, Sugiura K, Nagai-Okatani C, Sasaki N, Umemura M, Takahashi Y, Kimura T, Kuno A, Ishiwata T, and Toyoda M
    • 雑誌名

      Regenerative Therapy

      巻: 22 ページ: 68-78

    • DOI

      10.1016/j.reth.2022.12.009

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Epigenome editing reveals core DNA methylation for imprinting control in the Dlk1-Dio3 imprinted domain.2022

    • 著者名/発表者名
      Kojima S, Shiochi N, Sato K, Yamaura M, Ito T, Yamamura N, Goto N, Odamoto M, Kobayashi S, Kimura T and Sekita Y
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Research

      巻: 50 ページ: 5080-5094

    • DOI

      10.1093/nar/gkac344

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Epigenome editing reveals core DNA methylation for imprinting control in the Dlk1-Dio3 imprinted domain2023

    • 著者名/発表者名
      Sekita Y, Kojima S, Shiochi N, Kimura T
    • 学会等名
      第21回武田科学振興財団生命科学シンポジウム
    • 国際学会
  • [学会発表] Epigenome editing reveals core DNA methylation for imprinting control in the Dlk1-Dio3 imprinted domain2023

    • 著者名/発表者名
      Sekita Y, Kojima S, Shiochi N, Kimura T
    • 学会等名
      Genomic Imprinting from Biology to Disease
    • 国際学会
  • [学会発表] SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体による生殖細胞の性分化開始機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      太田昌美、伊藤駿瑛、長田純輝、西山晃、石黒啓一郎、田村智彦、関田洋一、木村透
    • 学会等名
      第45回 日本分子生物学会年会
  • [学会発表] Nlrp5およびNlrp9の雌マウスの生殖能における役割2022

    • 著者名/発表者名
      横田佳奈、田村史織、永田圭、神﨑理子、伊藤駿瑛、若林美月、関田洋一、木村透
    • 学会等名
      第45回 日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 染色体がコードするヒストン脱メチル化酵素KDM5CとKDM5Dのマウス胚発生における機能的差異と相同性2022

    • 著者名/発表者名
      永田圭、小杉真由子、大谷舞衣、池田優美、吉川友里香、板倉陽子、豊田雅士、関田洋一、木村透
    • 学会等名
      第45回 日本分子生物学会年会
  • [学会発表] STELLAによるZFP57の制御機構の解析2022

    • 著者名/発表者名
      御園杏里、山崎瑛司、中村肇伸、木村透、関田洋一
    • 学会等名
      第45回 日本分子生物学会年会
  • [学会発表] エピゲノム編集によるDlk1-Dio3インプリントドメインでのDNAメチル化の機能解析2022

    • 著者名/発表者名
      関田洋一、児島進、塩地直弥、小林慎、木村透
    • 学会等名
      第15回 エピジェネティクス研究会年会
  • [学会発表] レクチンマイクロアレイを用いたマウス心臓糖鎖における局在と加齢変化2022

    • 著者名/発表者名
      板倉陽子、吉川友里香、杉浦功祐、岡谷(永井)千晶、佐々木紀彦、木村透、久野敦、豊田雅士
    • 学会等名
      第41回 日本糖質学会
  • [備考] 北里大学・理学部

    • URL

      https://www.kitasato-u.ac.jp/sci/index.html

  • [備考] 北里大学・理学部・幹細胞学講座

    • URL

      https://www.kitasato-u.ac.jp/sci/resea/seibutsu/stemcell/index.html

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公開日: 2023-12-25  

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