研究課題/領域番号 |
22K06056
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
加藤 容子 近畿大学, 農学部, 教授 (40278742)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 卵 / ブタ / 老化 / 初期化 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
研究代表者者らは、ブタ卵を保存する新たな手法として「低温感作に関わらない培養温度域で保存する」という手法を開発した。ブタ卵は低温に対する感受性が高く、他の動物種で実施されている低温保存法があまり適切でないためである。既に生物学的な検討として、保存後、核のある状態の卵を用いた単為発生と卵の核を除去して体細胞核を導入して作出した(保存卵は細胞質のみ)核移植を実施し、それぞれの体外発生能を支持できる保存時間が異なることを明らかにしてきた。本課題では、この保存系をツールとして使用して、体外培養時に生じる卵細胞質の老化を阻止する因子や体細胞核を初期化する因子を大規模トランスクリプトームにより明らかにすることができるのではないかと考えた。R4年度は、保存卵におけるROS、GSH、ミトコンドリア膜電位などといったいくつかの生化学的特性を検討し生物学的検討の結果と照合した。その結果、24時間保存までは、対照区と比較してそれらの数値が大きくは変化しないことがわかった。また、保存培地に抗酸化物質を添加したり、保存前に卵をシクロスポリン(Cs)A で前処置することによって、若干、生化学的特性評価に用いた指標の値を改善する働きのあることもわかった。また保存27時間を超えると徐々に変化が起き始めることもわかった。この結果は生物学的検討の結果と同じ傾向であることがわかった。このような結果から、遺伝子発現の差異を比較検討するのに適切と考えられる時間帯域を決定できた。そして、現在はそれらの時間帯の卵を回収し始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R4年度は遺伝子解析を実施する卵の時間的タイミングを検討し終え、既に解析を行うサンプル回収を開始している。このことから、当初の計画と比較して前倒しする形で進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度は所定時間に回収した卵のRNA-seq解析結果を得る。そのためトランスクリプトーム解析に係る経費をR5年度に計上し実施する。老化に関する遺伝子解析では、加齢卵で特異的に変化する遺伝子群に着目する。初期化に関する遺伝子解析では、適切な時間帯で回収したサンプルをトランスクリプトーム解析し、卵子の初期化機構に関わる可能性のある遺伝子群を抽出する。いずれも、遺伝子群に関しては、様々なアプリケーションを用いて絞り込み、選び出した遺伝子に関しては、qPCRなど他の解析手法でも裏付けをとる。
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