研究課題/領域番号 |
22K06058
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
高浪 景子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (70578830)
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研究分担者 |
小出 剛 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 准教授 (20221955)
長谷川 功紀 福島県立医科大学, 保健科学部, 教授 (50525798)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マウス系統差 / 知覚感受性 / 個体差 / 痒覚 / ストレス / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
ヒトの皮膚の知覚(触覚、痛覚、痒覚、温冷覚)の感受性には大きな個人差が存在し、遺伝・免疫・自律神経・精神面との関連などのさまざまな要因が考えられている。実験動物においても、これまで知覚感受性の種差や系統差が存在することが報告されてきたが、知覚の感受性の原因について不明な点が多い。知覚の中でも痒覚に関して、近年、様々な伝達分子や神経基盤が明らかとなってきたが、痒みの感受性の個体差を生む原因は不明である。 本研究では、知覚の中でも特に痒覚に着目し、痒覚感受性の個体差の原因を明らかにするために、実験動物における系統差を利用し、痒みの感受性の系統差から、痒みの伝達に関わる分子およびその遺伝子多型を明らかにして、ヒトにおける痒み感受性の個人差の原因の理解に繋げることを目的とする。特に従来実験に用いられている実験系統マウスとユニークな特徴を保持する野生由来系統マウスの比較解析を実施する。 今年度は、実験系統マウスと野生由来系統マウスにおける痒覚感受性の違いについて行動薬理学解析を行った。まず、複数の起痒物質の投与濃度を検討した。そして、実験系統マウスと野生由来系統マウスの痒み行動に差がみられ、それぞれ感受性の高い末梢性起痒物質が異なることが分かった。痒みの系統差と並行して、精神面が痒覚に与える影響を調べるために、慢性ストレス負荷モデル動物を用いた解析では、末梢性起痒物質への応答性がコントロール群と比べて有意に上昇し、ヒトと同様に慢性ストレスによって痒みの過敏が誘発されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属機関の異動があり、実験室や実験機器の環境整備に時間を費やしたため。
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今後の研究の推進方策 |
痒覚の感受性の大きな違いがみられた実験系統マウスと野生由来系統マウスにおけるその他の知覚(触覚や痛覚)感受性についても引き続き解析を実施する。 痒みの感受性に関わる分子を探索する上で、まず、既知の知覚神経における痒み伝達分子の発現について、実験系統および野生由来系統マウスで比較解析し、発現に差がみられた分子における遺伝子多型を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の異動があり、想定していたよりも実験の進度が遅れたため。2023年度の遺伝子発現解析に使用する。
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