研究課題
本研究の目的は、疾患型と健常型のマウスモデル系統、FLS/Shi (非アルコール性脂肪肝炎)、NC/Nga (アトピー性皮膚炎)、STR/OrtCrlj(遺伝性変形性関節症)、日本産亜種由来のJF1/Ms(ヒルシュスプルング病)およびMSM/Ms(健常型)、合計5種類(以降、BRC5と記載する)の全ゲノムを対象にして、各系統の表現型に関連したゲノム多型を探索することである。特に長鎖ゲノム解読情報から得られた結果を活用して、短鎖ゲノム解読情報のみでは検出が難しかった構造多型(SV)および内在性可動遺伝因子(MGE)の分布の違いに注目する。また、本申請研究が対象とする表現型に関連して、ヒトとマウス双方の研究で利用可能なゲノム多型カタログの作成も目指している。研究初年度は、表記マウス系統の対象疾患に関連した遺伝子発現情報やエピゲノム情報を各種の公共データベースから収集するところから作業を進めた。遺伝子発現情報の検索については、NCBIのGEO (Gene Expression Omnibus)やSRA (Sequence Read Archive)、 GTEx (The Genotype-Tissue Expression)などを使用した遺伝子発現解析結果の検索を行った。エピゲノム情報の検索 については、UCSCゲノムブラウザや VISTA Enhancer Browser等を対象にして行なった。さらに、Mouse Genome Informaticsなどから当該系統の疾患感受性に関わる遺伝子の情報収集を行なった。また、現状のBRC5のゲノムスキャホールドをさらに高品質化する機会が得られたので、最新版のゲノムスキャホールドを使用して本申請研究の基盤情報となるSVやMGEの情報を得るための解析を行う事ができた。
3: やや遅れている
現在までの進捗状況について、本年度は表記マウス系統や対象疾患に関連した遺伝子発現情報やエピゲノム情報を各種の公共データベースから収集するところから作業を進めた。遺伝子発現情報の検索については、GEO、SRA、 GTExなどを使用して、BRC5の各系統の表現型に関連すると考えられる遺伝子の発現解析結果の検索を行った。遺伝子発現情報については、マウスゲノムの基準系統であるC57BL/6J系統をコントロールとして用いるため、この情報についても収集、整理を行った。エピゲノム情報の検索 についても、遺伝子発現情報と同様にして、C57BL/6J系統も含めてUCSCゲノムブラウザや VISTA Enhancer Browser等を対象にして行ない、BRC5の疾患関連表現型に関係すると考えられる遺伝子の発現制御領域の収集、整理を行った。この作業には、Mouse Genome Informaticsなどから公開されている遺伝子情報についても対象にして行なった。他のプロジェクトにおいて、現状のBRC5のゲノムスキャホールドの高品質化を行う機会を得たので、スキャホールドを最新版にしてSVやMGEを検出する作業を進めた。本申請研究が対象とする表現型に関連したヒトとマウス双方の研究で利用可能なゲノム多型カタログの作成については、ClinVarや GWAS Catalog などのデータベースから収集したヒトの情報の確認や整理を行った。
今後の研究の推進方策に関して、表記の各系統の表現型に関連したゲノム多型を探索するため、各種の公共データベースから、表記マウス系統や対象疾患に関連した遺伝子発現情報やエピゲノム情報の収集を継続して進める。NCBIのGEO やSRA、UCSCゲノムブラウザや VISTA Enhancer Browser、GTEx以外にも、検索可能な情報があればこれも対象にする。本申請研究の基盤情報となるBRC5のSVやMGEの検出を引き続き行う。特に、長鎖ゲノム解読から得られた結果を活用して、短鎖ゲノム解読では検出が難しかったSVとMGEの分布の違いに注目した解析を継続して行う。他のプロジェクトにおいて、現状のBRC5のゲノムスキャホールドの高品質化を行う機会を得たので、スキャホールドを最新版にしてSVやMGEを検出する作業を引き続き行う。さらに、スキャホールドを染色体の座標情報に対応させる作業を進め検出したSVやMGEを他の系統と比較する。さらに、公開されているマウス系統の多型情報等を対象にして、本申請研究において解析しているマウス系統の多型情報と比較するなど、解析対象を拡張して新規のゲノム多型の検出を試みる。また、本申請研究が対象とする表現型に関連したヒトとマウス双方の研究で利用可能なゲノム多型カタログの作成についても、対象のデータベースを拡張して情報を収集する。
本申請研究が対象とするマウス系統のゲノム情報について、申請時には想定していなかった高品質化を令和4年度に行う機会を得たので、当該ゲノム情報を高品質化した後に予定していた解析を行うことが経費の効果的な利用に資すると判断し、一部の解析を次年度に行うことにした。なお、当該ゲノム情報の高品質化は、令和4年度内に終了したので、差額を令和5年度以降に請求する助成金と合わせて使用する。
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