研究課題/領域番号 |
22K06062
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研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
飯田 真智子 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 障害モデル研究部, 主任研究員 (60465515)
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研究分担者 |
浅井 真人 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 障害モデル研究部, 部長 (70543536)
田中 基樹 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 障害モデル研究部, 主任研究員 (90584673)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | てんかん / 抑制ニューロン |
研究実績の概要 |
てんかんは、世界で7000万人以上が罹患する脳疾患である。再発性発作に加え、時に認知/運動機能障害や内臓機能障害を伴う。難治てんかんの機序解明や治療法開発には、ヒト重症てんかんを模したモデル動物が必須である。アクチン結合蛋白質であるGIRDINの機能欠損変異患者は発達性てんかん性脳症(DEE)を発症する(Nahorski MS et al, Brain 2016)。ヒトGIRDIN-DEE患者の遺伝子変異を模したGirdin機能欠損モデルマウス(gKO)は離乳前完全致死であるため(Kitamura et al, Nat Cell Biol 2008)、これまでGirdin機能欠損が難治てんかんを誘発する機序は不明であった。我々は、gKOの死因を突き止め、全てのgKOを長期生存させることに成功した。その結果、gKOに慢性的かつ高頻度の全般性てんかん発作が発症することが明らかとなった。てんかん患者脳では、抑制ニューロンの欠落や機能不全が多数報告されている。そこで、本年度は胎生14.5日、生後7日(大発作発症前)、生後28日(大発作発症期)、4ヶ月齢(発作発症後)の時系列にて、gKOにおける抑制ニューロンの分布を調べた。その結果、gKOでは、胎生期よりすでに大脳皮質および海馬原基における抑制ニューロンの欠落を認めた。皮質抑制ニューロンの欠落は特に背側皮質と海馬原基で著しく、一方、皮質下領域における抑制ニューロンの分布は野生型と同等に保たれていた。これらの成果より、gKOのてんかん病態の原因の一つとして、抑制ニューロン欠損による興奮性と抑制性のバランス崩壊が関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、Girdin KOマウス(gKO)のてんかん病態を明らかにするために、次の研究を計画している:1) gKOの興奮ニューロンおよび抑制ニューロンの分布解析、2) コンディショナルKOマウスによるてんかん誘発責任ニューロンの同定、3) Girdin機能欠損によるアクチン制御不全がもたらすニューロン機能障害の解明。本年度は、このうち1)を達成することができた。具体的には、gKOでは、胎生14.5日より大脳皮質および海馬原基における抑制ニューロン(Gad65/67陽性細胞)が欠落していた。さらに、出生後もそれに起因すると考えられる海馬における抑制ニューロンの欠落が認められた。海馬での抑制ニューロンの欠落は120日齢でも回復することはなかった。電気生理学的解析でも、微小抑制性シナプス後電流(mIPSC)の頻度が低いことが確認された。一方、皮質興奮ニューロンの層構造に大きな異常は認められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、予定通り、2) コンディショナルKOマウスによるてんかん誘発責任ニューロンの同定、3) Girdin機能欠損によるニューロン発生障害機序解明を進める予定である。2)では、抑制ニューロンリネージならびに興奮ニューロンリネージで選択的にGirdinを欠損させたコンディショナルノックアウトマウスの解析を行い、gKOに生じたてんかん病態の責任リニエージの同定を行う予定である。コンディショナルノックアウトマウスはすでに施設で維持しており、一部解析を開始している。解析を行うための機器や実験プロトコルも準備できており、円滑に研究が遂行できる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体の感度が良く、条件検討のための消耗品の購入数が予定より少なく済んだ。当該助成金は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、コンディショナルノックアウトマウスの解析に使用する。コンディショナルノックアウトマウスのてんかん症状が出る日齢が予想より遅いため、その分必要となるマウス飼育費として使用する予定である。研究の進捗に影響はない。
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