研究課題/領域番号 |
22K06064
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石井 亜紀子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10400681)
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研究分担者 |
喜納 裕美 (早下裕美) 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (60532728)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 遺伝子治療 / 経口免疫寛容誘導法 / AAV / 筋ジストロフィー / カニクイザル |
研究実績の概要 |
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は,臨床的には高度の筋力低下・筋萎縮,病理学的には骨格筋の変性・壊死を引き起こす平均寿命28歳の重篤な遺伝性疾患である. 根本的な治療法はなく,効果的な遺伝子治療が必要である. これまで応募者の研究グループは,骨格筋に遺伝子を効率的に導入できる組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を開発し,小型化されたマイクロジストロフィン遺伝子を使用してその治療の可能性を検討してきた.その結果,AAV遺伝子治療成功の鍵となるのは免疫反応のコントロールであることを明らかにし,安全な免疫反応のコントロール法の開発が遺伝子治療の臨床応用に必須であると考えた.免疫抑制剤であるタクロリムスの使用により、導入遺伝子の発現を延長できるという研究結果はすでに報告しているが、さらに安全性の高い免疫寛容を誘導する必要があると考え、本研究を計画した。 将来のDMDの遺伝子治療を目標として,非ヒト霊長類にて羊膜由来間葉系幹細胞による経口減感作により免疫寛容誘導を行い,導入遺伝子発現を持続させるため、当該年度は、遺伝子導入用のrAAVベクターの大量調整を完了した。免疫寛容を誘導するための羊膜由来間葉系幹細胞は、KANEKAより共同研究として供与されるため、実験を行う直前に着実に培養できるように、セットアップを完了した。また、カニクイザル(3-4歳)10頭からcell based assay法により中和抗体を測定し、遺伝子導入に用いるカニクイザル3頭の選別を終了した。また、組み換えDNA実験の承認も得られたので、カニクイザルへの投与に向けての準備が完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度に予定している、カニクイザルへのrAAVベクターの投与実験の準備が整ったため。カニクイザルの70%以上が、rAAVに対する中和抗体を保有していることから、中和抗体陰性の個体の選別をcell based assayで選別した。また、1個体あたり、4X10の13乗の大量のウイルスベクターが必要であるため、コントロールベクターを含めた、rAAVの大量調整をおこなった。機関施設でのDNA組み換え実験の申請も滞りなく終了した。免疫寛容を誘導するための羊膜由来間葉系幹細胞は、KANEKAより共同研究として供与されるため、実験を行う直前に培養できるように、セットアップも完了した。
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今後の研究の推進方策 |
Cell-based assay法を用いてAAVに対する抗体のないカニクイザル(3-4歳)に,経口で抗原となる遺伝子産物(LacZ)を羊膜由来間葉系幹細胞にプラスミドで発現させたものを餌に混ぜて投与する.本研究で投与を予定しているrAAVはpH 7前後では安定であることを報告し、羊膜由来間葉系幹細胞と混合し,ドライシロップを用いれば,サルへの確実な複数回の経口投与が可能であることをすでに確認している.抗原曝露後のインターフェロンγ産生能の減弱を確認し,免疫応答の誘導を確認した後,rAAV (AAV8CMVLacZ)をカニクイザルの左右の上腕二頭筋,前脛骨筋の計4箇所に直接注入(1x1013 vg/1箇所)し,8,16及び24, 42週後に筋組織の生検を行い,同時に各時点で採血も実施する.対照は,未処置の細胞をドライシロップに混ぜたエサを与える.LacZの発現をPCR法,ウエスタンブロット法及び免疫組織化学染色法を用いて解析する.LacZやベクターに対する血清抗体価の測定をELISAまたはウエスタンブロット法で行う.経口減感作が不十分であった場合に備え、静脈投与による免疫寛容誘導も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
中和抗体陰性カニクイザルの選定後、移管時期がコロナ禍でずれたため、飼育・飼料費が当初の予定より少なくなり、22年度から23年度に持ち越したため。 カニクイザルの飼育費・飼料費として引き続き使用する予定である。
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