研究課題/領域番号 |
22K06068
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
濱道 修生 鳥取大学, 染色体工学研究センター, 特命助教 (60721686)
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研究分担者 |
香月 康宏 鳥取大学, 医学部, 教授 (90403401)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Fcガンマ受容体 / 抗体 / 薬物動態 / 薬効予測 / 安全性予測 / 人工染色体ベクター / 免疫不全 / がん研究 |
研究実績の概要 |
本申請課題の最終目的は「免疫不全[Foxn1 knock-out (KO)]/ヒトFcガンマ受容体(FcgR)マウス」の作製であり、「ヒトIgG抗体医薬品の薬物動態をヒト化」することである。この目的を達成するため、我々は既に系統化された複数のFoxn1 KOマウス(+内在抗体遺伝子破壊系統)の免疫学的解析とヒト腫瘍形成の確認を実施する。ゲノム編集技術を用いて、Foxn1 KOマウスのFcgR遺伝子群をKOする。申請者の所属研究室が独自に開発を進めたマウス人工染色体ベクター(MAC)を用いて、ヒトFcgR遺伝子群とその制御領域をMACに搭載し、MAC-hFcgRを作製する。このMAC-hFcgRをFoxn1 + FcgR double knock-out (dKO)マウスのES細胞に導入し、本モデルマウスを作製する予定である。本研究課題は、更なる開発が進むヒトIgG抗体医薬品の薬物動態に着目し、薬効予測や安全性予測の外挿性の向上を目指した挑戦的な試みである。 そこで令和4年度は、まず系統化された複数のFoxn1 KOマウス(+内在抗体遺伝子破壊系統)の免疫細胞を解析した。異なる系統による差異が確認され、本研究課題の目的の一つであるヒト腫瘍形成のためには、T細胞の減少が肝要と考えた。そこで、極めて明瞭なT細胞減少を示した系統を選択し、ヒトがん細胞を皮下移植した結果、腫瘍形成が認められた。また、この系統の更なる免疫学的解析を実施し、末梢血、胸腺並びに脾臓のミエロイド系免疫細胞やリンフォイド系免疫細胞の陽性率を確認した。さらに、マウスFcgRの遺伝子欠損やMACに搭載するヒトFcgR遺伝子群の計画も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究計画課題は①Foxn1 knock-out (KO)マウス(+内在抗体遺伝子破壊系統)の免疫学的解析&腫瘍形成と②マウスFcgR遺伝子の欠損である。そこで、複数の系統化されたFoxn1 KOマウスの末梢血、胸腺並びに脾臓を摘出した後、細胞を回収し、フローサイトメトリー(FCM)を実施した結果、CD3+ T細胞、CD3+ CD4+ ヘルパーT細胞、CD3+ CD8+ キラーT細胞の低減が認められた。本研究課題の目的の一つであるヒト腫瘍形成のためには、T細胞の減少が肝要と考え、極めて明瞭なT細胞減少を示した系統を選択した。ヒト腫瘍形成の初期検討として、まずヒト大腸がん細胞株であるHCT116を皮下移植した結果、移植1週間後から腫瘍形成が確認され、移植3週間後ではtumor volumeが約300 mm^3まで増加した。上記結果から、がん研究への応用可能なFoxn1 KOマウスが樹立されたと判断し、この系統の更なる免疫学的解析を進めた。すなわち血液細胞、胸腺細胞並びに脾臓細胞のFCMを実施し、ミエロイド系免疫細胞(好中球等)やリンフォイド系免疫細胞(T細胞、B細胞等)の陽性率を確認した。さらに、マウスFcgRの遺伝子欠損やMACに搭載するヒトFcgR遺伝子群の計画も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の研究計画課題は①ヒトFcgR遺伝子群を導入したマウス人工染色体ベクター(MAC)の構築(MAC-hFcgR)と②MAC-hFcgRのFoxn1 + FcgR double knock-out (dKO)マウスES細胞への導入である。遺伝子組換え実験において、bacterial artificial chromosome (BAC)をMACに導入したり染色体断片としてMACに転座したり、効率よく迅速に進める一方、本研究課題の最終目的である「ヒトIgG抗体医薬品の薬物動態をヒト化」に着目し、本異種移植モデルマウス作製を目指す。
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