研究課題/領域番号 |
22K06073
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
浅賀 正充 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 主任研究官 (60572865)
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研究分担者 |
神谷 亘 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60551421)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 新型コロナウイルス / リバースジェネティクス / In vivoイメージング |
研究実績の概要 |
世界的なパンデミックを引き起こした新型コロナウイルス感染症は、全世界で非常に大きな問題として喫緊な対策が求められている。SARS-CoV-2の治療薬開発では動物での薬効評価が必須であるが、時間がかかるため早急な治療薬の開発にはより簡便で迅速な動物感染モデルでの薬剤評価系が必要不可欠である。本申請研究では、in vivoイメージングによりSARS-CoV-2感染マウスを非侵襲的に観察し、中和抗体薬や抗ウイルス治療薬の検討を迅速に行う系の確立を目的とする。昨年度は化学発光遺伝子としてAkaLuc遺伝子を挿入したウイルス(rSARS-CoV-2-AkaLuc)の作成を試みたが、AkaLuc遺伝子を挿入した組換えウイルスは増殖しないことが判明した。その原因の1つとして、欠損させるウイルス遺伝子よりも挿入する化学発光遺伝子AkaLucが大きいため、ウイルスゲノムが粒子内にうまくパッケージングされない可能性があることが挙げられる。そこで我々は、AkaLucよりも遺伝子サイズの小さいteLucを挿入した組換えSARS-CoV-2(rSARS-CoV-2-teLuc)を作成した。rSARS-CoV-2-teLucは既存のrSARS-CoV-2-nLucよりもマウス生体内での検出感度が上昇していることが明らかとなり、中和抗体薬や治療薬評価に適していることが考えられる。また、rSARS-CoV-2-teLucは通常のSARS-CoV-2と比較して、細胞内とマウス個体内で増殖速度も同程度であり、またサイトカインやケモカインの発現も大きな違いはなかった。このことからも、rSARS-CoV-2-teLucが迅速な治療薬開発に有効である可能性が高いことが分かった。今後、既存の中和抗体や治療薬を用いて、治療薬の効果の迅速な判定が可能かどうか検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体内で検出可能な組換えウイルス(rSARS-CoV-2-teLuc)に成功しており、In vivoイメージングによりウイルス感染の検出系が確立できている。さらに既存の組換え蛍光ウイルスよりも検出感度が高いことが示された。また、rSARS-CoV-2-teLucの特徴が本来のウイルスと比較してほぼ同様の特性を持つことも示されたため、治療薬効果の迅速判断に使用できる可能性が高く、治療薬の迅速な効果判定という目標に着実に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の実験では、作成したrSARS-CoV-2-teLucで治療薬の効果の判定が可能かどうかを検討する。rSARS-CoV-2-teLucを感染したマウスでの化学発光の検出はすでに可能であるが、今後どの程度のタイターで治療薬の効果を検討するために、どの程度のタイターで感染させるか、使用する発光基質の量の検討、治療薬の投与のタイミングなどを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の実験に使用する予定だった組換えSARS-CoV-2が作成できず、実験にかかる費用が予定より少額になったため。当該年度はほぼ予定通りの支出となっている。
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