研究実績の概要 |
本研究計画では、出芽酵母を用いて、栄養リッチなシグナルおよび栄養飢餓のシグナルによる酵母の増殖制御をRNAレベルで調節する系を用いて解析する。Ccr4-Not複合体とPan2-Pan3複合体は、細胞質における主要なmRNAのポリA鎖分解酵素(デアデニラーゼ)であり、mRNAの分解に働いている。ccr4Δとccr4Δpan2Δ 二重変異株は、YPD 培地において野生型株と比較して増殖が悪く、非発酵性炭素源であるグリセロールと乳酸を含むYPGlyLac培地ではさらに増殖遅延がより顕著になる。ccr4Δpan2Δ二重変異株の増殖遅延を抑制するマルチコピーサプレッサーとして3’-5’ エキソヌクレアーゼをコードするREX2 遺伝子を同定した。REX2 遺伝子には類似の遺伝子REX1, 3, 4がある。rex1Δrex2Δ二重変異はccr4Δpan2Δ 二重変異株の増殖遅延をさらに悪化させた。以上の結果から、REX1 、REX2 遺伝子がCCR4 、PAN2 遺伝子と重複した機能をもつことが示唆された。 また、RNA結合タンパク質であるPuf5についても解析した。puf5Δ clb2Δ変異株が単独変異株よりも極端な増殖遅延を示す結果をきっかけに、Puf5がIXR1 mRNAの制御を介して、サイクリンBをコードするCLB1遺伝子の細胞周期特異的な発現を制御することを明らかにした。さらに、puf5Δ clb5Δ clb6Δ三重変異株も極端な増殖遅延を示すことを見出した。解析の結果、Puf5がIXR1 mRNAの制御を介して、CLB1遺伝子の発現だけでなく、CLB2遺伝子の発現も制御することを見出した。これらの結果を元に、Puf5とIxr1によるCLB1, CLB2の発現制御の意義を考察した。
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