研究実績の概要 |
tRNAは翻訳反応に必須の分子であるが、既存のソフトウェアによるゲノム解析だけでは全コドンの認識に必要な一揃いのtRNAレパートリーが同定できない生物種も多い。「tRNA遺伝子の不足がどのように補完されているか」という問いに対して、極限環境に生息する単細胞紅藻類イデユコゴメ綱の核ゲノムに散在するオルガネラゲノム断片 (Nuclear Plastid DNA, NUPT; Nuclear Mitochondrial DNA, NUMT)にコードされたtRNA(NUPT/NUMT-tRNA)が翻訳反応に関与する可能性を検討することを目的として分子生物学・生化学的な手法を用いて研究を行った。 当該年度はイデユコゴメ類に属する数種の生物の核ゲノム配列をもとに、tRNA遺伝子配列の再検討およびレパートリーの整理を行った。tRNAをコードする領域だけでなくプロモーターやターミネーター、エキソン・イントロンの配列を丁寧に解析することで、その発現の有無や強さについて一定の知見が得られた。また、ゲノムの再解析から新規に同定したtRNA遺伝子群の発現およびスプライシングの位置について逆転写PCRおよびそのシーケンシングによる解析を行った。その結果、候補遺伝子のほとんどの場合において転写およびスプライシングが確認され、スプライシングと転写後修飾の関連性についても新たな知見が得られた。一方で、遺伝子は存在するものの発現が確認できない遺伝子もあり、異なる手法での解析を進めている。
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