研究課題/領域番号 |
22K06076
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀越 直樹 東京大学, 定量生命科学研究所, 准教授 (60732170)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | クロマチン / エピジェネティクス / 核内高次構造 |
研究実績の概要 |
真核生物のゲノムDNAは、4種類のヒストンタンパク質(H2A、H2B、H3、H4)を2分子ずつ含むヒストン8量体の周りに約1.7周巻きついた、ヌクレオソームを基本構造として細胞核内に収納されている。ヌクレオソームが数珠状に連なって形成されるクロマチンの構造は多様性に富んでおり、ゲノムDNA上で機能するタンパク質群の結合や酵素活性を調節している。それにより、遺伝子発現などのゲノムDNAの機能発現制御がなされていると考えられている。細胞核膜周辺におけるクロマチンは、ヘテロクロマチンと呼ばれる凝集したクロマチン状態であることが分かっているが、その構造基盤はほとんど明らかになっていない。本研究では、核ラミナ構成因子とクロマチンとの結合様式を明らかにし、核ラミナ構成因子の変異や機能異常が原因の一つであると考えられる早老症や筋ジストロフィーなどの疾患の作用機序解明に貢献することを目指している。本年度においては、核膜関連因子群をリコンビナントタンパク質として精製する系の確立に成功し、生化学的手法を用いて、核膜関連タンパク質とクロマチンとの相互作用解析を行った。さらに、核膜関連タンパク質の変異体を用いた解析によって、核膜関連因子群とクロマチンとの相互作用ネットワークを明らかにした。加えて、核膜関連タンパク質とヌクレオソームとの複合体のクライオ電子顕微鏡構造解析に向けて、核膜関連タンパク質とヌクレオソームとの複合体を調製する系の確立に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、核膜関連タンパク質とクロマチンとの複合体の生化学的解析及び構造生物学的解析を行い、核膜近傍の高次クロマチンの構造基盤を明らかにすることを目的としている。本年度は、まず、4種類の核膜関連タンパク質をリコンビナントタンパク質として精製する系の確立に成功した。並行して、4種類のヒストンタンパク質(H2A、H2B、H3、H4)を含むモノヌクレオソーム及びヌクレオソームが連なったポリヌクレオソームの調製を行った。精製した核膜関連タンパク質とヌクレオソームを用いて、生化学的解析によってそれらの相互作用を明らかにした。さらに、核膜関連タンパク質間、あるいは、核膜関連タンパク質とヌクレオソームとの結合に影響を及ぼすと考えられる核膜関連タンパク質の変異体を作製し、それらの相互作用ネットワークを詳細に解析した。さらに、核膜関連タンパク質とヌクレオソームとの複合体の精製系の確立にも成功した。本年度の研究計画では、ヌクレオソームの調製及び核膜関連タンパク質の精製系の確立を行うことを予定していた。実際に、ヌクレオソームの調製に加えて、4種類の核膜関連タンパク質とそれらの変異体の精製系の確立、核膜関連タンパク質とヌクレオソームとの相互作用解析及び複合体の調製に成功した。以上のことから、当初の計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に精製系を確立した4種類の核膜関連タンパク質の他にも多数の核膜関連タンパク質が存在し、核膜の維持や核膜とクロマチンとの相互作用制御がなされていると考えられる。それゆえに、多様な核膜関連タンパク質の精製系を確立し、それらとクロマチンとの相互作用解析を行う。さらに、精製した核膜関連タンパク質とヌクレオソームとの複合体の立体構造をクライオ電子顕微鏡解析によって明らかにする。これらの解析により、核膜近傍のクロマチンの構造基盤の解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費の高騰により、購入を予定していた消耗品を一部削減したことにより、18,091円の繰越金が発生した。R5年度において、繰越額を加えた893千円を消耗品費、70千円を国内旅費、50千円をその他(DNAシーケンシング委託費)として計上する計画である。具体的には、核ラミナ-クロマチン複合体の調製及び構造解析を行うために、細胞培養用培地に20万円、タンパク質精製用試薬に25万円、DNAの精製試薬に19.3万円、クライオ電子顕微鏡における試料作成用グリッドに25万円、国内3学会への出張(東京、兵庫、福岡)に係る旅費として7万円、DNAシーケンシング委託費として5万円を計上する予定である。
|