研究課題/領域番号 |
22K06079
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 綾 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(RPD) (40595112)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 減数分裂 / 線虫 / DNA二重鎖切断 / 相同組み換え / 交叉 |
研究実績の概要 |
減数分裂は、精子や卵子を生み出す特殊な細胞分裂である。減数分裂における不具合は、人間の場合は流産、不妊、染色体異数症などの原因になる。このため、減数分裂の基本的なメカニズムの理解は、社会的にも喫緊の課題である。減数分裂において相同染色体が均等分配されるためには、減数分裂前期に相同染色体間に交叉が作られることが重要である。交叉はプログラムされたDNA二重鎖切断から始まる交叉型相同組み換えにより作られるが、この時どのようにDNA切断酵素であるSPO-11が制御されるために、適切な量のDNA二重鎖切断が生み出されているかには多くの謎が残されている。我々は、モデル生物線虫の卵母細胞を用いて、この謎にアプローチし、減数分裂の保存されたメカニズムを明らかにすることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、DNA二重鎖切断酵素SPO-11の活性が制御される分子メカニズムの一端を明らかにするための実験を行った。まずSPO-11の制御因子であるDSB-1とそのパラログであるDSB-2の様々な変異株を作製し、その表現型を解析した。特に、構造解析より、DSB-1 C末端部位とDSB-2 C末端部位が2量体を構成し、さらにその二量体ドメインの中央をDSB-3タンパク質のN末端が貫通するという結合が予測されているため、この予測を検証するための変異株を作製した。その結果、DSB-1 C末端部位とDSB-2 C末端部位の部分だけではin vivoでは結合が安定しないこと、C末端ドメイン以外にDSB-1/2が持つIDRの長さが結合に重要である可能性が示唆された。また、DSB-1は非常にセリン比重の多いタンパク質であり、特にIDR中にセリンが集中するドメインを持つ。今回、我々がこれまでに報告したATRキナーゼリン酸化部位以外のセリンにおいても、DSB-1がリン酸化を受けることがわかったため、このセリン集中ドメインの一部を欠損させた変異株を作製し、この表現型も解析した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、DSB-1が相互作用する因子と、その相互作用様式を、生化学的、遺伝学的、細胞生物学的手法を用いてさらに詳細に明らかにすることを目指す。特に、今年度の解析より、DSB-1におけるATRキナーゼのリン酸化サイトがリン酸化を受けると、その後協調的に近傍に集中するセリンが他のキナーゼによってリン酸化されるために、一気にDSB-1活性が抑制されるというモデルが示唆されたため、これを実験的に検証することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、偶然にも、所属学科において退官に伴い閉鎖される研究室より、備品や消耗品を多く譲渡していただく機会があり、遺伝学的解析、生化学解析に必要な酵素類や、インキュベーターなどの購入費を大きく節約することができたため、使用額が当初の計画よりも少なかかった。繰り越した差額の使用予定としては、今後、CRISRP-Cas9ゲノム編集の試薬やgenotypingの試薬などの購入を予定している。
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