研究課題/領域番号 |
22K06084
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
那須野 亮 神戸大学, 先端バイオ工学研究センター, 特命准教授 (90708116)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 一酸化窒素 / 翻訳後修飾 / 酵母 / 還元酵素 |
研究実績の概要 |
前年度までに、NO分解酵素活性を見出した酵母ニトロレダクターゼ(NTred)が、遊離ニトロチロシン(NT)に対して還元活性を示すか、組換え酵母NTred(Hbn1, Frm2)を用いて解析した。その結果、酵母NTredは遊離NTに対する還元活性を示さなかった。また、NOストレスで処理した酵母細胞中のタンパク質ニトロ化(PTN)修飾レベルを、抗NT抗体を用いたウェスタンブロッティングによって解析したところ、NTred遺伝子破壊株のPTN修飾レベルは野生型株に比べて上昇しなかった。これらの結果から、酵母NTredが遊離NTやPTN修飾の還元を介さずに、NOの直接分解によって酵母のNO耐性に寄与することが、より強く示された。 一方、NO処理した酵母をプロテオーム解析に供したところ、NO依存的にPTN修飾を受けるタンパク質や発現量が変化するタンパク質を、複数同定した。また、チロシン残基がNO依存的にアミノチロシン(AT)残基へと変換されたタンパク質も同定した。これらの内、一部については免疫沈降およびウェスタンブロットにより、PTN修飾や発現量の変化の再現性を確認した。現在、これらのタンパク質が細胞内でニトロ化タンパク質還元酵素(NPR)活性の基質となるかを確認するため、NOストレスを除去した後のPTNレベルの推移を、Tet-offなどの発現誘導制御システムを用いて解析するための準備を行っている。 また、酵素活性測定の過程で、細胞内還元剤や補因子の共存により非酵素的にNTがATへ還元されることを見出した。このことから、細胞内においては還元剤・補因子濃度の調節により間接的にNTシグナルを制御する可能性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属変更により研究環境の変化が生じ、従来用いていた解析系や予定していた分析系をセットアップするのに時間を要したため、プロテオーム解析後のNPR基質タンパク質の絞り込みや新規NO耐性機構の詳細な解析がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
酵母NTredによるNO分解・NO耐性機構の詳細解明を早急に行う。具体的には、NTredによるNO分解(還元)の反応生成物同定、補因子や補酵素の要求性などの酵素特性の解析、速度論的解析、酸素による酵素反応阻害の解析を行う。また、酵母細胞内のNO濃度がNTredにより変化するかも評価する。 一方、NO処理した酵母のプロテオーム解析結果に基づき、候補タンパク質のPTN修飾レベルがNOストレス除去後に変化するかどうかを指標にNPR基質タンパク質Xを同定する。その後、質量分析によりPTN化Xがアミノ化Xへと還元されているか解析する。PTN化Xに対する還元活性を指標とした分画・精製やPTN化Xを用いたプルダウンアッセイなどにより、NPR候補タンパク質を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属変更に伴い研究環境が変化したことで、既存の実験系統の再セットアップにある程度時間を要したため、プロテオーム解析以降のNPR基質タンパク質の同定や新規NO耐性機構の解析がやや遅れており、これらの解析は23年度には行っていない。これらの計画は、24年度に実施する予定である。
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