研究課題/領域番号 |
22K06100
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
梅名 泰史 名古屋大学, シンクロトロン光研究センター, 准教授 (10468267)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 光合成 / アンテナタンパク質 / 重金属イオン |
研究実績の概要 |
シアノバクテリアにおける光合成の水分解・酸素発生の反応中心の光化学系II蛋白質には、光エネルギーを供給するアンテナ蛋白質フィコシアニンは(PC)が結合している。今年度の研究では、PCに重金属の水銀、鉛、銅イオンが結合する阻害様式をそれぞれの金属イオンを含む溶液を加えた結晶構造解析法によって明らかにできた。水銀及び銅イオンはPCの色素分子フィコシアノビリン(PCB)に結合し、鉛イオンはPC分子の境界に結合していた。水銀イオンが結合したPCでは、PCBのポリフィリン環が水銀イオンを取り囲む配位構造に変化しており、水銀イオンが不可逆的に溶け出しにくい、強固に取り込まれた構造となっていた。なお、PCに結合している3つのPCBの内の1つだけが、水銀と銅イオンと結合しており、他の2つのPCBには重金属イオンが影響しない構造になっていた。このことは、これまでのPCの光吸収スペクトルの分析からも、スペクトルが完全に変わるわけでなく、強度の減衰に留まっていることからも示されていた。これは、PCが重金属イオンの阻害を受けるが、結合場所を制限することで、ある程度のPCBの機能を残して、シアノバクテリアが生存できるよにうになっていると思われる。一方で、強固に水銀イオンが結合する仕組みは、PCをもつシアノバクテリアを使って、環境から水銀イオンを排除する方法につながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来予定していた光化学系IIタンパク質(PSII)に重金属イオンが結合した構造解析を行う予定であったが、PSIIの機能を補うタンパク質のアンテナタンパク質のフィコシアニン(PC)に重金属イオンが結合して阻害する結合様式を明らかにできた。予定していた結果とは異なるが、光合成の重金属イオンの阻害機構の解明につながっており、概ね研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きこれまでに得られている、アンテナタンパク質フィコシアニンにおける重金属イオンの阻害様式を詳細に分析する。また、本来の目的である、反応中心タンパク質の光化学系IIタンパク質に重金属イオンが結合した結晶構造解析に取り組み、水分解・酸素発生反応への影響を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究では、目的の研究を実施するにあたってそれほど経費を必要としなかったためであり、最終年度に論文化における翻訳や出版費用を確保するために次年度に繰り越しを行った。
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