研究課題/領域番号 |
22K06103
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
溝端 栄一 大阪大学, 大学院工学研究科, 講師 (90571183)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 構造生物化学 / X線自由電子レーザー |
研究実績の概要 |
微生物から植物に至るまで存在する膜貫通型タンパク質であるS型アニオンチャネルは、細胞膜を通じてさまざまな陰イオンを透過する。そのイオン透過機構は、従来のアニオンチャネルとは異なる可能性が指摘されているが、いまだ解明されていない。この研究の目的は、S型アニオンチャネルとその透過する陰イオンとの相互作用を可視化することである。 昨年度に引き続き、インフルエンザ菌由来のS型アニオンチャネル膜タンパク質について、XFEL施設SACLAにて微小結晶の回折データを高分解能で収集するための結晶性の改良を進めた。特に、新たにLipidic cubic phase法での結晶化条件の探索を行った。 一方、インフルエンザ菌由来のS型アニオンチャネルとはアミノ酸配列が大きく異なる、真核生物由来のオーソログタンパク質について、コンストラクトを種々工夫することで発現量を改善して精製する条件を確立した。1回の精製収量が1-2mg程度と少ないことから、Lipidic cubic phaseでの結晶化条件の探索と並行して、結晶を用いずに構造解析可能なクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析の可能性を検討した。精製バッファー中の塩濃度、界面活性剤の種類と濃度、カラムクロマトグラフィーの条件検討を進めることで、クライオ電子顕微鏡のグリッド上に良好に分散した単粒子のイメージを撮影できる条件を見出した。予備的なイメージデータの撮影とデータ解析の結果、分解能約8オングストロームで構造を決定することに成功し、10本のヘリックスから成るモノマーが3つ会合したトリマー構造を明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インフルエンザ菌由来のS型アニオンチャネル膜タンパク質について、高分解能の回折像を得るための結晶性の改良の進捗はやや遅れているものの、替わりに真核生物由来の膜タンパク質の発現・精製条件を確立したことは、S型アニオンチャネルの構造機能相関の解明に向けた一定の進捗が得られた。 また、この真核型チャネルの三次元構造を低分解能ながらクライオ電子顕微鏡によって初めて決定できたことは、今後の高分解能での解析につながる重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
インフルエンザ菌および真核生物由来のS型アニオンチャネル膜タンパク質について、SACLAで高分解能の回折能を与える結晶を調製する条件を引き続きスクリーニングする。 一方、クライオ電子顕微鏡を用いて低分解能での構造が得られた真核生物由来の膜タンパク質について、今後、より高分解能での構造解析を行うための測定条件の検討を行う。膜タンパク質に種々のアニオン(塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオンなど)を添加した条件で精製や測定を行うことで、これらのアニオンと膜タンパク質の複合体構造の取得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
SACLAでのX線回折実験に必要な結晶の作製にやや遅れがみられた分、全体の実験の進捗計画や成果発表の計画などを変更し、次年度に研究資金を繰り越して使用することとした。
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