研究課題/領域番号 |
22K06108
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
日下 勝弘 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 教育研究振興教員 (10414591)
|
研究分担者 |
横山 武司 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (50524162)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 中性子構造解析 / Sirtuin5 |
研究実績の概要 |
変異体SIRT5の脱スクシニル化活性の測定:SIRT5の活性に重要とされるアミノ酸に変異を導入したSIRT5(Q140L, N141V, H158M)の機能解析を行うことを目的とし、変異導入した遺伝子合成を行い、これを基にSIRT5変異体について 遺伝子組み換え大腸菌による発現、大腸菌破砕によりタンパク質の抽出および精製を行なった。これらの変異体について、基質結合と酵素反応におけるQ140,N141,H158の役割を明確にするために、ミカエリス-メンテン解析によってKmとKcatを得、野生型と比較することを試みた。現在、解析を進めている。 中性子回折測定用大型結晶育成:中性子構造解析のための大型結晶育成を目的として、野生型SIRT5について、遺伝子組み換え大腸菌による発現、大腸菌破砕によりタンパク質の抽出および精製方法の確立を行ない、SIRT5の発現タンパク質の濃縮により、23.2mg/mLのタンパク質溶液を得ることができた。しかしながら、研究代表者の所属における実験環境に不備が生じたため、中性子構造解析の大型結晶育成のための結晶化条件検索や実際の大型結晶化に用いるのに十分な大量のタンパク質精製には至らなかった。結晶化に必要な試薬として、スクシニル化リシンscuprx1(配列:SKEYFS{Lys(suc)}Q K)のペプチド合成を行なった。大型結晶育成のためのタンパク質大量精製とそれを用いた結晶化条件の検索を今後進める予定である。 中性子回折データ精度向上法開発:iBIXで得られる白色中性子回折データは単色よりデータ精度が低い傾向にある。波長依存性の対して適切に補正する新たな方法を開発することを目的とした初期検討を実施した。現在検討を継続している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
変異体SIRT5の脱スクシニル化活性の測定については分担者を中心に当初予定通りに進めることができている。2022年度からの着手を予定していた中性子回折測定用大型結晶育成については、タンパク質の精製方法の確立およびスクシニルリシンの作成を行うことには成功したが、主担当である研究代表者の所属における実験遂行環境に不備が生じたため、中性子構造解析用のタンパク質大量精製および大型結晶育成の条件検討を十分に進めることができず、大型結晶育成にまで至ることができなかった。中性子回折データ精度向上法開発についても、初期的な検討を進めたが、こちらも同じ理由により十分な検討時間を取ることができず、当初予定していた内容まで進めることはできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
翌年度については、特に遅れが生じている以下について強力に推進することを予定している。 中性子回折測定用大型結晶育成については、SIRT5の精製方法の確立およびスクシニルリシン作成はすでに終了しており、翌年度は研究代表者の所属変更により実験環境不備が改善されるめ、試料準備および結晶化条件の検索等を円滑に進めることができると考えている。特に SIRT5-スクシニルリシン複合体の結晶化条件の検索および大型結晶化については、当初予定していたエフォートを増やすことにより加速することを予定している。 中性子回折データ精度向上法開発については、これまでに測定したデータをベースとして波長依存性に対する適切な補正方法を検討し、状況により自身の所属グループ内に研究協力者を得て、手法の検討を推し進めることを考えている。 中性子回折データ測定については、J-PARC物質生命科学実験施設に設置のiBIXで中性子回折データを常温で測定することを予定しており、2023年度後半のビームタイムを想定して、テスト測定可能な大型結晶(1mm3程度)が育成できた時点で、テスト測定を行い、2023年度中に中性子構造解析用のデータ収集を目指す。また、中性子回折測定と同じ試料を用いて、中性子回折データとの相補的解析に利用するため、KEK, PF等の放射光を用いてX線回折データセットの測定も実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の主たる部分をになう研究代表者の所属において、実験を遂行するにあっての環境に大きな不備が生じたために、代表者が進めることを予定していた実験を十分に遂行することができない状況となり、予算の使用を一部保留した。次年度は代表者の所属が変更となったことにより実験環境の不備が改善されるため、当該助成金を使用した実験を行うことを予定している。翌年度分として請求した助成金と合わせて、タンパク質の大量精製、大型結晶育成のための条件検索や実際の大型結晶育成に必要な消耗品(実験器具および試薬)の購入に充当する。また、精度向上開発および解析に用いるワークステーションについて開発手法の検討がある程度進んだ段階で必要なスペックを決定してこれの購入を行う。翌年度の予算については、2023年度予定の2022年度とは異なる複合体結晶の育成および回折データ測定に関連する消耗品の購入に充当する。旅費については、翌年度以降の国内外の会議への参加を改めて検討し、これらへの参加費用に割り当てる。
|