研究課題/領域番号 |
22K06108
|
研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構 |
研究代表者 |
日下 勝弘 一般財団法人総合科学研究機構, 中性子科学センター, 副主任研究員 (10414591)
|
研究分担者 |
横山 武司 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (50524162)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 中性子構造解析 / SIRT5 |
研究実績の概要 |
SIRT5とスクシニル化リシンscuprx1(配列:SKEYFS{Lys(suc)}Q K)の複合体の中性子結晶構造解析解析を行うことを目的として、野生型SIRT5について、遺伝子組み換え大腸菌による発現、大腸菌破砕によるタンパク質の抽出および精製を行ない、大型結晶育成のための結晶化条件検索や実際の大型結晶に用いるのに十分なタンパク質を得ることに成功した。得られたタンパク質SIRT5 と昨年度作成したスクシニル化リシンを用いて、複合体結晶の大型結晶育成の条件検討を行った。これらの複合体結晶はポリエチレングリコール3350(PEG3350)を結晶化剤として結晶が得られることがわかっているため、これを結晶化剤として用件の最適化を進めた。結晶化には今後の大型結晶化を考慮して、蒸気拡散法(シッティングドロップ法)を用いて行った。PEG3350を結晶化剤として、0.1M Tris-HClを緩衝剤として結晶化を試み、PEG3350が20~30%において結晶が得られることがわかった。ただし、現状のタンパク質溶液では通常の蒸気拡散法では最初の結晶核形成が難しいため、結晶を細かく砕いた溶液を希釈して結晶化ドロップに加えるミクロシーディグ法により結晶を育成する必要があることがわかった。現状では大型結晶育成の素条件を得ることができており、長辺1mmを超える結晶の育成の成功に成功した。中性子回折データ精度向上法開発については、波長依存性の対して適切に補正する新たな方法を開発することを目的として、既存のデータにおける波長に対する系統的な補正の必要性等の検討を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度の時点で中性子構造解析用のタンパク質大量精製および大型結晶育成の条件検討を進めることができなかった。また、2023年度については主担当である研究代表者が2022年度に所属の機関の都合により、現在の所属機関に移ることとなり、実験遂行環境の一部再構築が必要となったため、大型結晶育成の条件検討を進めることはできたが、実際の大型結晶育成と中性子回折実験にまでは至ることがっできなかった。中性子回折データ精度向上法開発についても同じ理由により十分な検討時間を取ることができず、当初予定していた内容まで進めることはできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
2022、2023年度については、所属の実験遂行環境の不備や、異動における実験環境再構築により実験遂行の遅延が余儀なくされたので、2024年度は以下について強力に推進する。 2023年度中に研究代表者の所属変更に伴う実験環境の再構築を行うことができ、大型結晶育成の素条件のけんとうまですすめることができたので、2024年度は大型結晶育成および中性子回折データ測定を円滑に進めることができると考えている。SIRT5-スクシニルリシン複合体の大型結晶化を早急に実施し、1mm3以上の結晶の育成を実現する。また、中性子回折データ測定については、J-PARC物質生命科学実験施設に設置のiBIXで中性子回折データを常温で測定する。2024年度後半のビームタイムを想定して、テスト測定可能な大型結晶が育成できた時点で、テスト測定を行い、2024年度中に中性子構造解析用のデータを収集する。また、中性子回折測定と同じ試料を用いて、中性子回折データとの相補的解析に利用するため、KEK, PF等の放射光を用いてX線回折データセットの測定も実施する。中性子回折データ精度向上法開発については、これまでに測定したデータをベースとして波長依存性に対する適切な補正方法を確立する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の主たる部分をになう研究代表者が所属を変更(異動)したことにより、代表者が進めることを予定していた実験を十分に遂行することができない状況となり、予算の使用を一部保留した。当該年度に実験環境の再構築をおこなうことができたので、次年度に当該助成金を使用した実験を行うことを予定している。翌年度分として請求した助成金と合わせて、2種類のタンパク質複合体の大型結晶育成に必要な消耗品(実験器具および試薬)や中性子回折実験に必要な消耗品の購入に充当する。また、翌年度の予算については、主に、2種類目の複合体の回折データ測定に関連する消耗品の購入に充当する。旅費については、翌年度以降の国内外の会議への参加を改めて検討し、これらへの参加費用に割り当てる。
|