研究課題/領域番号 |
22K06116
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
藤田 英伸 兵庫県立大学, 理学研究科, 助教 (70794923)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トランスロコン |
研究実績の概要 |
小胞体では膜透過チャネルであるトランスロコンを介して、タンパク質の形成が行われている。本研究ではこの過程において、トランスロコンがどのようにして透過途中の膜タンパク質を認識し、膜貫通セグメントの形成に寄与できるのかの理解を目的とした。そのため、次の二点について展開している。 『合成後のポリペフプチド鎖の動き』 トランスロコン内でのポリペプチド鎖の一時停止機構と停止後の動態を明らかにするために、無細胞実験系を用いてトランスロコン内のポリペフプチド鎖の動きを精査し、以下の結果を得た。①小胞体内腔に糖鎖などの立体障害が発生しうる因子があると,正電荷の抵抗に打ち勝ち順方向への動きに伴ってポリペフプチド鎖は内腔へと膜透過すること,障害がない場合には比較的疎水性度がある領域まで逆方向への動きが起こること,②またその疎水性度にはある程度の閾値が存在すること,③ポリペフプチド鎖の逆方向への動きは正電荷の抵抗に伴って起こること 『トランスロコンによるポリペフプチド鎖上の正電荷アミノ酸の認識機構』 酵母を用いて膜透過停止を起こすポリペフプチド鎖上の正電荷アミノ酸を認識するトランスロコン作用部位を特定する。①トランスロコンの主な構成要素であるSec61の細胞質側に露出する電荷アミノ酸のうち、正電荷負電荷ともに数個のアミノ酸が、ポリペフプチド鎖上の正電荷アミノ酸の認識に関わることを見出した。②またそれらSec61のアミノ酸が、膜タンパク質の配向決定作用を有することも見出しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『合成後のポリペフプチド鎖の動き』に関して ポリペフプチド鎖の順逆両方向への動きを想定し,物理的基盤として,ブラウン運動・糖鎖ラチェット作用モデルの提案、そのための理論物理の研究者との積極的な連携が進んでおらず、また論文採択とまで至っていない。 『トランスロコンによるポリペフプチド鎖上の正電荷アミノ酸の認識機構』に関しては、順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
『合成後のポリペフプチド鎖の動き』に関して ブラウン運動・糖鎖ラチェット作用モデルの提案のため、情報収集・議論を活発に行う。また必要に応じて追加実験も行い、論文採択に必要な情報を揃える。 『トランスロコンによるポリペフプチド鎖上の正電荷アミノ酸の認識機構』に関しては、見出しつつある配向決定作用を結論づけるとともに、ポリペフプチド鎖の疎水性配列の認識機構の方へと展開していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度より所属先が変更になる。それに備えて今年度は使用を抑え、次年度に使用できるように計画した。次年度は新たに消耗品を買い揃える必要があるため、繰越金額も使い生化学試薬やガラス・プラスチック器具、合成DNAなどを購入予定である。
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