研究課題/領域番号 |
22K06129
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
上川 泰直 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (40770459)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 核膜ストレス |
研究実績の概要 |
2023年度は浸潤能が高く生体内で核膜ストレスに曝されると考えられる膠芽腫由来細胞株・U251MGとU87MGを用いて核膜ストレス応答の鍵となる細胞の特性や分子の探索を行った。その結果、まず、細胞周期の進行が核膜ストレス応答と密接に関わることを見出した。細胞周期の進行が早く、多くの細胞がS期或いはG2期にあるU251MG細胞では、G1期の割合が高いU87MG細胞と比較して核膜ストレスに対する感受性が高く、核膜修復効率が低いことが明らかとなった。この違いは細胞周期の進行を抑制するCDK inhibitorであるp21の発現に依存的であることも突き止めた。 また、様々な膜の修復を実行するESCRT III複合体の動態を制御するATPase・VPS4Bの発現量がU251MGで顕著に減弱していること、VPS4Bの発現抑制によりU87MGの核膜ストレス抵抗性が低下すること、VPS4Bの発現誘導によりU251MGの核膜ストレス抵抗性が昂進することを見出した。さらに、VPS4Bの発現誘導によりESCRT III複合体の主要な構成成分であるCHMP7の核膜損傷部位への集積が促進される一方で、損傷部位からの離散も亢進される可能性が示唆された。以上のように、核膜ストレス応答の分子機構の一端を明らかにすることに成功した。 また、核膜ストレスに対する応答因子の網羅的な解析のための条件の再探索を行い、高浸透圧条件で一定時間培養した後、通常の浸透圧に戻すことで高効率に核膜の損傷を誘導可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
核膜ストレス応答の鍵となる分子としてVPS4Bを見出し、その機能を分子レベルで明らかにしつつある一方で、RNA-seqや質量分析による解析が予定よりも遅れている。その理由として、核膜ストレスを効率良く簡便に誘導する手法が確立されていないことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に明らかとなったVPS4Bの機能と解析を引き続き行う。特にESCRT III複合体の動態に及ぼす影響を詳細に解析する。また、浸透圧ショックを利用して高効率に核膜ストレスを誘導し、近接依存性ビオチン標識による核膜損傷部位に集積する新規因子の網羅的探索を行う。さらに、RNA-seqにより核膜ストレスにより発現変動する遺伝子を解析することで、核膜ストレスに対する応答反応の生理的意義と分子メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に予定していたRNA-seq及によるトランスクリプトーム解析と質量分析によるプロテオーム解析を2024年度に行うため、それに関連した費用を2024年度に使用する。
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