研究課題/領域番号 |
22K06134
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
樋口 麻衣子 立教大学, 理学部, 准教授 (30420235)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 微小管 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
微小管は真核生物における主要な細胞骨格の一つで、間期においては中心体から伸びた微小管が細胞質に網目状のネットワークを形成し、細胞内輸送やオルガネラの配向の制御など、多様な役割を果たしている。一方、細胞が間期からM期へ移行する際には、細胞質の微小管ネットワークが素早く崩壊・消失し、代わりに、倍加した2つの中心体を両極とする紡錘体微小管が形成される。このように、微小管は細胞周期の時期に応じてその構造を劇的に変化させ、全く異なる機能を発揮するが、間期からM期へ移行するタイミングで、いかなるメカニズムで細胞質の微小管ネットワークが崩壊・消失するのかについては、ほとんど明らかになっていない。本研究では、PI3K-Akt経路が微小管結合分子EB2/RP1を介してM期移行に伴う微小管ネットワークの再編成を制御する可能性について検討を行った。微小管結合分子EB2/RP1はその機能がほとんど分かっていない分子であったが、研究代表者はこれまでにEB2/RP1がそのファミリー分子EB1とは異なり間期の細胞においては微小管全体に局在すること、また分裂期の細胞においては微小管に局在しないことを見出した。この結果より、EB2/RP1が細胞周期依存的にその局在を変化させる可能性を考えた。そこでEB2/RP1の局在について詳しく調べたところ、間期の一部の細胞においてEB2/RP1が微小管上ではなく細胞質にドット状に局在することを見出した。そこで、このドット状局在の意義とメカニズムについて詳しく検討を行うことにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
EB2/RP1の局在と細胞周期の関係について検討を行った。これまでに、EB2/RP1の局在とヒストンH3のSer10のリン酸化との関連を調べた。ヒストンH3のSer10のリン酸化は細胞周期のG2期からM期への移行と強く相関することが知られているが、ヒストンH3のSer10のリン酸化のシグナルが高い細胞においてEB2/RP1のドット状の局在が観察されることが分かった。このことから、細胞周期のG2/M期においてEB2/RP1が微小管上から消失し、ドット状の局在を示す可能性を考えている。この可能性についてさらに検討するため、蛍光分子でラベルしたEB2/RP1(mRFP-EB2/RP1など)を発現した細胞のリアルタイム観察を行う予定であったが、使用予定だった共焦点顕微鏡(Zeiss LSM710)の不調により令和4年度は細胞のタイムラプス観察を行うことができず、予定通り研究を進めることが出来なかった。令和5年4月に新規に共焦点顕微鏡(Zeiss LSM980)が導入され、細胞のタイムラプス観察を行うことが可能となったため、今後は当初の予定通り研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
EB2/RP1の局在と細胞周期の関係について検討するため、蛍光分子でラベルしたEB2/RP1(mRFP-EB2/RP1など)を発現した細胞のリアルタイム観察を行う。また、ドット状局在のメカニズムについても検討を行う。具体的には、EB2/RP1のドット状局在の正体を明らかにするため、ドット状にEB2/RP1がどこに局在しているのかについて詳しく検討する。また、EB2/RP1の結合分子を探索し、EB2/RP1の局在変化のメカニズムについても検討を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用予定だった共焦点顕微鏡の不調により、令和4年度に行う予定であった細胞のタイムラプス観察を行うことが出来ず、研究に遅れが生じてしまった。現在は、新たな共焦点顕微鏡が導入されたことにより、当初予定していた実験を行うことが出来る状態である。そこで、今年度は当初の研究計画通り、EB2/RP1の局在と細胞周期の関係を明らかにするとともに、EB2/RP1の結合分子を探索し、EB2/RP1の局在変化のメカニズムについても検討を行いたいと考えている。次年度使用額を含めた助成金については、これらの検討に必要な生化学的、分子生物学的、細胞生物学的実験を遂行するための消耗品、設備、備品の購入費用として使用する予定である。
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