研究課題/領域番号 |
22K06143
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梶浦 裕之 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 助教 (30704209)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖鎖工学 / N-結合型糖鎖 / 糖転移酵素 / 植物での一過的発現 / 抗体 / エフェクター機能 |
研究実績の概要 |
2023年度は、昨年度に取得した抗体上のN-結合型糖鎖構造非還元末端側への糖転移に関わる酵素3種類のうち、動物由来の糖転移酵素に着目した。ベンサミアナタバコに対しアグロインフィルトレーションを実施し、モデル抗体と動物由来の糖転移酵素を一過的に共発現させた。発現モデル抗体をプロテインGカラムで精製し、その抗体上のN-結合型糖鎖構造を確認したところ、通常生合成されない異常なN-結合型糖鎖構造が確認できた。そこで、糖転移酵素のゴルジ体局在を変化させN-結合型糖鎖修飾をさらに改変すべく、昨年度構築したキメラコンストラクト7種類に関しても同様にアグロインフィルトレーションでモデル抗体と共発現させ、精製後そのN-結合型糖鎖構造を確認した。その結果、シス側よりトランス側に糖転移酵素を局在させた場合に目的とする構造を保持するN-結合型糖鎖の割合が増加し、それに伴い異常な構造のN-結合型糖鎖の割合が減少していく傾向が確認できた。また、ネイティブな酵素とキメラ酵素を抗体と共発現した場合のN-結合型糖鎖構造との比較から、ネイティブな動物型の糖転移酵素を植物で共発現させた場合ゴルジ体のメディアル槽に局在し、植物細胞内でのN-結合型糖鎖修飾経路の改変に寄与することが示唆された。 植物、昆虫由来のキメラ酵素の合計14種類に関してもモデル抗体とベンサミアナタバコでアグロインフィルトレーションにより一過的に共発現させ、モデル抗体の発現を確認した。さらに、より動物型の糖鎖構造を保持するモデル抗体作製のため、植物型のN-結合型糖鎖修飾に関与する内在性糖鎖修飾関連酵素3種類のゲノム編集植物の作製にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物由来の7種類のキメラ抗体発現によるN-結合型糖鎖修飾改変効果が確認できた。また、別途実施したシミュレーションにより、ゴルジ体局在だけでなく動物型糖転移酵素がもつ独特なタンパク質構造が植物細胞内でのN-結合型糖鎖修飾に影響を与えていることが見えてきた。動物由来の酵素に関しては本問題点に対し新たな戦略を立て、N-結合型糖鎖構造改変を進めている。植物と昆虫由来のキメラ酵素に関してもモデル抗体との共発現は終了しており、順次その糖鎖構造の改変効果を確認している。着実な前進と確実な成果を残しつつ、研究開始時に策定していた以上の研究を立案し進めており、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
植物、及び昆虫由来のキメラ酵素14種類とそれぞれ共発現したモデル抗体上のN-結合型糖鎖構造解析を実施し、その構造の推定と比率を算出する。より改変効果が確認できたモデル抗体のFcγレセプターとの結合能を確認し、抗体のエフェクター機能をより向上させるN-結合型糖鎖構造非還元末端側の糖残基を見出す。 また、植物型のN-結合型糖鎖修飾を加速させる内在性糖鎖修飾関連酵素のゲノム編集植物を作製し、モデル抗体と最適なキメラ酵素発現により、植物型糖鎖構造を保持せずかつ高いエフェクター機能をもつN-結合型糖鎖構造をもつモデル抗体を作製する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画的な実験と予備実験、新たな分析法を構築した結果、効率よく試薬類を利用することができた。一方で、昨今の物価上昇に対し次年度使用する計画を立てている消耗品に関しても同様に価格変更があり、その消耗品の購入に充てるため高騰分の予算を確保した。
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