研究実績の概要 |
栄養源に応答し細胞成長や代謝を制御するmTORC1は、がんや糖尿病などの疾病に加え、老化や寿命とも密接に関わる。本研究では、遺伝学的解析が容易で哺乳類細胞と同様のmTORC1経路をもつ分裂酵母をモデル系として、新規mTORC1制御因子を同定しその機能を明らかにすることで、酵母からヒトまで保存されたmTORC1の活性制御メカニズムの理解を目指す。昨年度、共免疫沈降法によりmTORC1の抑制因子として見出したHhp1キナーゼとmTORC1の相互作用が検出されたことから、Hhp1がmTORC1を直接リン酸化することでその機能を抑制する可能性が示唆された。そこで本年度は、Hhp1がmTORC1のどのサブユニットと相互作用するのかを解析した。その結果、分裂酵母mTORC1のサブユニットであるTco89, Toc1およびWat1の欠損株でもHhp1とmTORC1の相互作用に変化は見られなかったことから、Hhp1はTor2あるいはMip1と相互作用することが示唆された。また、mTORC1の抑制機能を亢進するHhp1のアミノ酸置換によってmTORC1とHhp1の相互作用が強くなった。また、Hhp1に加えて、mTORC1経路の新規関連因子として同定したPsr1およびSPBP4H10.16cについても進めた。昨年度、Psr1とSPBP4H10.16cは複合体として機能することが示唆されたため、Psr1とSPBP4H10.16cの様々な部分断片を用いて両者の相互作用領域を絞り込んだ。加えて、細胞内局在解析の結果、両者とも細胞膜に局在し、SPBP4H10.16の膜局在はPsr1に依存することが明らかになった。また、Psr1-SPBP4H10.16c複合体の相互作用因子を探索し、複数同定することに成功した。
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