研究課題/領域番号 |
22K06155
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平山 弘人 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (50525847)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | NGLY1 / PNGase / 細胞内輸送 / 糖鎖修飾 / 糖鎖代謝 / 小胞体 / 細胞質 |
研究実績の概要 |
細胞質ペプチド:N-グリカーゼ(PNGase,哺乳動物ではNGLY1)は糖タンパク質からN-結合型糖鎖を脱離する反応を触媒するアミダーゼであり,真核生物に広く保存されていることが知られている 。 新生糖タンパク質は小胞体内腔で正しく折り畳まれた後に,そのタンパク質が機能を発揮する場所へと輸送される。一方,新たに合成された糖タンパク質のうち,正しい折りたたみ構造をとることが出来なかった異常糖タンパク質は小胞体品質管理機構(ERQC)によって選別され,細胞質へと逆行輸送された後に,ユビキチンープロテアソームによって分解される。小胞体関連分解(ERAD)と呼ばれるこの経路の中で細胞質PNGaseはかさ高く表面積のの大きいN-結合型糖鎖をタンパク質から脱離することによって,筒状構造をとっているプロテアソームにおけるタンパク質の分解効率を向上させていると考えられている。 我々はNGLY1欠損HeLa細胞(NGLY1-KO細胞)で細胞外への分泌が減少しているタンパク質を複数見出し,その中でwntシグナルの調節に関わるタンパク質DKK1に着目し,解析を進めている。現在までに,DKK1の発現減少は遺伝子転写レベルではみられないことを確認している。このことから,本タンパク質は翻訳後,なんらかの理由で細胞外への分泌が減少していることが予想された。そこで我々は,FLAGタグを付加したDKK1をHeLa細胞に発現させてその細胞外への分泌異常のメカニズムを詳細に解析することとした。その結果,分泌異常だけでなく,細胞外へと分泌されたFLAG-DKK1はNGLY1-KO細胞由来の野生株のものと比べると,若干の分子量増加が見られた。そこで,この分子量変化に着目しそのメカニズムを明らかにするための解析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NGLY1-KO細胞由来のDKK1で分子量の増加が見られたものの,その差がわずかであるために,SDS-PAGEによる分離を行う際のSDS-PAGEの泳動条件の検討,サイズの大きいゲルを使用することによる分離の向上等を試みたものの,分離の差を明瞭にすることが困難であった。したがって,分離条件の最適化は一旦中断し,分子量の差が生じる原因を明らかにするために糖鎖の修飾に着目することにした。DKK1はN-およびO-結合型糖鎖の修飾を受けることが知られており,細胞内に存在するDKK1と細胞外に分泌されたDKK1ではその糖鎖構造の差により分子量に大きな違いが生じることが知られている(細胞内DKK1の分子量:30kDa, 分泌型DKK1の分子量:40kDa)。この分子量増加の原因がN-結合型糖鎖由来のものであるかを検討するために,DKK1からPNGaseF処理によりN-結合型糖鎖を脱離し分子量を比較した。しかしながらNGLY1-KO細胞由来のDKK1では未だ分子量の増加が見られた。このことから,DKK1の分子量増加はO-結合型糖鎖修飾の変化または他の翻訳後修飾による可能性が強く示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の解析を中心に進める 1) DKK1の細胞内挙動の解析する 2)正常HeLa細胞とNGLY 1欠損細胞の糖鎖修飾の詳細な解析する。 3)糖鎖修飾以外の翻訳後修飾(S-S結合,脂質修飾等)が正常細胞とNGLY 1欠損細胞で差がないかについても検討を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は条件検討を行い解析を行う最適な条件を探索していたために,消耗品の購入量が当初の計画よりも少なくなり,次年度使用額が生じてしまった。 昨年度の検討により解析条件が確定したので,来年度は昨年度の消耗品購入費と合わせてた額の研究費を執行できると考えている。
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