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光合成酸素発生反応は光化学系Ⅱタンパク質のマンガンクラスターで行われる。反応中間状態の分子構造はX線結晶構造解析により構造が解明されつつあるが、分子構造の解明だけでは酸素発生メカニズムは解明できない。現在の反応モデルの中心となっている量子化学計算では、プロトン1つの配置の違いで全く異なる電子状態、化学状態を導いてしまう。本研究では、磁気構造解析の結果と組み合わせることによりマンガンクラスターの分子構造、プロトン状態、電子状態の三者を統合する。本研究はマンガンクラスターの高酸化中間状態の電子状態を電子スピン共鳴(ESR)により解析することを目的とした。S2中間状態には構造異性体が存在する.低スピン状態(g=2)と高スピン状態(g=4)としてEPRで検出される信号に相当する。その他に高スピン状態(g=5)が異性体として存在することを確認している。 これまでの量子化学計算から、3つのマンガンと4つのマンガン1つのCaの立方体が開いたopen-cubaneと立方体が閉じたclosed-cubaneと呼ばれる分子構造が提唱されてきた。本研究では高スピンg=4状態をQ-bandパルスEPRを用いて測定し解析することに成功した。X-band(9.5GHz帯)のEPR測定ではパルスEPRによる測定は困難であったが、Q-bandを用いてg=3.1に信号を検出することができた。また緩和時間の測定により高スピン状態における基底状態と励起状態のエネルギーギャップを定量的に評価することに成功した。得られたエネルギー準位は量子化学計算と直接比較することが可能なパラメーターである。広範囲でのMM領域を考慮に入れたQM/MM計算(共同研究)によりg=4状態がclosed-cubane構造であることを明らかにした。更にg=5状態についてもパルスESRにより解析を行いその分子構造を提唱した。
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