研究課題/領域番号 |
22K06164
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
鷹野 優 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (30403017)
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研究分担者 |
近藤 寛子 北見工業大学, 工学部, 助教 (60700028)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 水素結合 / 二次構造 / 分子力場 / 蛋白質 / 分子動力学シミュレーション / 量子化学計算 |
研究実績の概要 |
タンパク質の高次構造に依存する新規な力場関数とそのパラメータを開発するために、代表的な二次構造について水素結合エネルギーを量子化学計算とNegative Fragmentation Approach (NFA)を組み合わせて計算し、古典力場との比較を行った。2022年度は、3_10ヘリックスおよびπヘリックスの追加計算を行い、解析結果をαヘリックスの結果と比較するとともに、水素結合エネルギーの傾向と構造との関係について考察した。まず、NFAにより得られた各水素結合ペアの水素結合エネルギーを古典分子力場(AMBERff99力場)の結果と比較したところ、分子力場では、αヘリックスと同様、πヘリックスの水素結合エネルギーが過大評価された。水素結合を形成するペプチド結合のみで構成されるミニマルモデルでは水素結合エネルギーは分子力場のものとほぼ同じになるが、隣接するペプチド結合を含むモデルでは水素結合エネルギーが小さくなることから、隣接するカルボニル基およびアミノ基の影響よりペプチド結合が脱分極し、水素結合が不安定化されることが示唆された。一方で、3_10ヘリックスでは、αヘリックスとは異なり、末端から2つ目の水素結合ペアで水素結合が大きく不安定化されていた。この傾向に関する違いは、ヘリックス構造の違いにより隣接するカルボニル基およびアミノ基との相対配置が異なることに起因していた。以上の結果をもとに、近距離の相互作用の影響を含めることで分子力場を改良する方法について検討し、原子の電荷を改良することで量子化学計算の結果をある程度再現できることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二次構造形成において重要である水素結合エネルギーの二次構造依存性に関して、αヘリックスに加えて、πヘリックスや3_10ヘリックス内の水素結合エネルギーについても、その傾向について明らかにすることができた。さらには、近距離の相互作用の影響を含めることで分子力場を改良する方法について検討し、原子の電荷を改良することで量子化学計算の結果をある程度再現できることがわかってきたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、βシート構造、ターン構造などの他の二次構造中の水素結合に対しても同様の方法で水素結合エネルギーの評価を行い、結果を反映させるとともに、改良した分子力場を実装し、シミュレーションを行うことでその検証を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機などの備品購入のため計上していたが、現存の設備で当初の想定よりもデータを得ることができたため、研究が進み論文投稿に集中したため。計算機購入を次年度に移し、量子化学計算、分子動力学シミュレーションの加速のために執行を予定している。
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