研究実績の概要 |
本研究では、ストレス顆粒形成においてユビキチン鎖の役割を詳細に解明するため、細胞内で存在する多様な形態のユビキチン鎖、特に研究が進んでいない非定型のユビキチン鎖を試験管内で作製し、ストレス顆粒形成に関わる物性を有するのか明らかにすることを目的としている。本年度では、昨年度に続き、作製が困難なLys48結合型の環状ユビキチン鎖(ジユビキチン)を高純度かつ大量に試料調製し、環状ユビキチン鎖の動的な構造特性を詳細に調べた。昨年度において、粗視化分子動力学シミュレーションによる環状ジユビキチンの動的な構造プロファイルが得られたものの、膨大で複雑なデータの解析方法が確立できていなかった。そこで今年度、100マイクロ秒間における環状ジユビキチンの二つのユビキチンユニット同士の距離データを、過去の結晶構造解析の結果を基に、オープン状態とクローズ状態のバイナリデータとして変換し、自己相関関数解析することにより、開閉運動の周期性を解析した。その結果、環化により開閉運動が顕著に抑制されることが定量的に示すことができ、さらに、周期の減少程度は核磁気共鳴法による緩和分散実験結果とよく相関していることがわかった。本結果は、Protein Science誌において学術論文として発表した(Sorada, et al. Protein Sci, 2023, 32(10), e4768)。
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