研究課題/領域番号 |
22K06175
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
向山 厚 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 助教 (80647446)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 概日時計 / 時計タンパク質 / KaiC / 分子進化 |
研究実績の概要 |
今日の地球上に存在する生物の多くは、概日時計を用いて地球の自転に伴う周期的な環境変化を予測し、自らの生理機能の時間的統合を図っている。光合成細菌であるシアノバクテリアの概日時計はKaiA、KaiB、KaiCの3種類のタンパク質から構成され、これら3種類の時計タンパク質とATPを混合すると、試験管内に24時間のリズムが再構成される。シアノバクテリアは約30億年ほど前に地球上に誕生し、その光合成能によって地球の大気環境を酸化的な環境へ変貌させたため、概日時計を持つ他生物の誕生をもたらしたとされる。本研究課題はシアノバクテリア時計タンパク質の祖先型を復元し、再構成系アプローチを駆使することで、生命が「いつ、どのようにして概日時計を獲得したのか?」という進化の謎に迫る実験研究である。 今年度は、祖先型KaiA、KaiB、KaiCの単離条件を検討した。現生KaiABCの知見をもとに、大腸菌による発現、各種カラムクロマトグラフィーによる精製条件を検証したところ、各祖先型タンパク質のアミノ酸配列の特性を考慮して条件の最適化を行った結果、これまでに5種類の祖先型KaiA、5種類の祖先型KaiB、そして15種類の祖先型KaiCを高純度で取得することに成功した。また、これらの祖先型KaiABCの中には試験管内で概日リズムを示すペアが存在することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は配列推定法に基づいて祖先型タンパク質を復元し、その機能解析を通じて概日時計システムの進化を分子レベルで検証することが目的であるため、課題の遂行のためには祖先型タンパク質を首尾よく準備することが肝要である。それぞれのKaiタンパク質の祖先型を一定数調製でき、また特定の組み合わせにおいて概日リズムの試験官内再構成に成功できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に引き続き祖先型Kaiタンパク質の調製、リズム生成能、そして酵素特性解析を行い、分子機能レベルで見た概日時計進化に関する知見を蓄積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究費を効率よく使用することに努めた結果、助成額と使用額との間に差が生じた。次年度より研究機関を異動するため、繰り越した分を次年度のできるだけ早い時期に一般試薬や機器の購入に充てる。
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