研究課題
脂肪細胞は全身のエネルギー代謝恒常性に関わり、その機能異常は肥満、2型糖尿病などの生活習慣病の発症と関係する。脂肪細胞は外的環境変化を感知し、細胞の質と数を変化させる。外的環境変化はに対し、細胞はシグナル伝達を介して速やかに応答する一方、環境変化が持続するとエピゲノムを介して遺伝子発現を変化させる。本研究では脂肪細胞分化での鍵となるエピゲノムの動的変化を解明することを目的とする。本研究で得られる成果は、生活習慣病の効果的な予防・治療法への足がかりとなる。脂肪細胞分化過程における遺伝子発現解析から見出したSETD5に着目し、プロテオミクスによる相互作用タンパク質の解析を行った。SETD5は核内受容体コリプレッサーNCoR, ヒストン脱アセチル化酵素HDAC3と転写抑制複合体を形成することで脂肪細胞分化を抑制することを明らかにした。転写抑制複合体の動的制御を理解するために、クロマチン免疫沈降による遺伝子局在解析とエピゲノム解析を行った。SETD5を含む転写抑制複合体は、時間依存的に脂肪細胞分化のマスターレギュレーター遺伝子のエンハンサーに局在し、ヒストンアセチル化と遺伝子発現を抑制することが明らかとなった。また、分化誘導刺激により、SETD5がユビキチン化を受けプロテアソーム経路で分解されることにより、ヒストンアセチル化が促進することが明らかとなった。さらに、SETD5のユビキチン化に関わるE3リガーゼ候補として、プロテオミクス解析から後期促進複合体APC/CとRNF213を見出した。
2: おおむね順調に進展している
初年度の目標は、脂肪細胞分化を抑制する転写抑制複合体を明らかにし、その動的制御を解析することである。脂肪細胞分化を抑制するSETD5に着目し、新規の転写抑制複合体を見出した。転写抑制複合体の遺伝子局在解析とエピゲノム解析を行い、転写抑制複合体がヒストンアセチル化を抑制することを明らかにした。よって初年度の研究はおおむね順調に進展している。
SETD5のユビキチンE3リガーゼ候補について、さらなる詳細な解析を行い、転写抑制複合体の動的変化がエピゲノムに与える影響を明らかにする。エンハンサー上での転写抑制複合体の形成が、ヒストンアセチル化酵素の局在とヒストンアセチル化に与える影響を解析する。
初年度に予定していた次世代シークエンス解析の一部を、次年度に行うことになったため。生化学・分子生物学実験、次世代シークエンス解析に物品費を使用する。得られた研究成果を学会発表するため旅費を使用する。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) 備考 (2件)
Nat Metab
巻: 5(3) ページ: 370-384
10.1038/s42255-023-00764-4
Nat Commun
巻: 13(1) ページ: 5715
10.1038/s41467-022-33363-0
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/03/press20230324-02-rna.html
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/10/press20221017-01-beige.html