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2022 年度 実施状況報告書

試験管内再構成系を用いた構成的ヘテロクロマチン維持の構造基盤の解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K06179
研究機関東京大学

研究代表者

佐藤 祥子  東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (90624966)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードヘテロクロマチン / エピジェネティクス / ヌクレオソーム / クライオ電子顕微鏡
研究実績の概要

真核生物のゲノムDNAは、ヒストンH2A、H2B、H3、H4からなるヒストン八量体にDNAが巻きついたヌクレオソームを基本単位としたクロマチンを形成し、細胞核内に収納されている。遺伝子を多く含み転写活性化したユークロマチンに対し、繰り返し配列を多く含む構成的ヘテロクロマチンは、転写やDNA組換えが抑制されゲノムの安定化に寄与していると考えられている。本研究は、構成的ヘテロクロマチンのエピジェネティックマークの書き込み酵素を含むクロマチンを試験管内で再構成し、クライオ電子顕微鏡を用いて立体構造を解析することにより、ヘテロクロマチンの形成と維持の機構を明らかにすることを目的としている。
2022年度は、構成的ヘテロクロマチン領域のヒストンH3の9番目のリシン残基にメチル基を導入する(H3K9me2/3)ヒストンメチル基転移酵素がクロマチン上でヌクレオソームをメチル化する機構を解析するため、ヒストンメチル基転移酵素を精製した。また、H3K9me2/3に適したクロマチン基質を検索するため、様々なヌクレオソームを試験管内において再構成した。精製したヒストンメチル基転移酵素に対し、試験管内で再構成したヌクレオソームを基質としたメチル化活性試験および結合性試験を行い、ヒストンメチル基転移酵素によるH3K9me2/3が効率的に起こるヌクレオソーム基質を見出すことに成功した。クライオ電子顕微鏡観察に必要量のヒストンメチル基転移酵素-ヌクレオソーム複合体を調製するため、精製系の構築を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

構成的ヘテロクロマチン領域のヒストンH3の9番目のリシン残基にメチル基を導入するヒストンメチル基転移酵素の精製に成功した。試験管内再構成ヌクレオソームを基質としたヒストンメチル化活性試験を行なった結果、精製したヒストンメチル基転移酵素が活性を有することを確認することができた。また、試験管内再構成ヌクレオソームを用いてヒストンメチル基転移酵素との結合性試験を行った結果、ヒストンメチル基転移酵素とヌクレオソームとの結合を確認することができた。これらの混合物から、クライオ電子顕微鏡解析に適したヒストンメチル基転移酵素-ヌクレオソーム複合体を精製するための条件を検討することができたため、2022年度は、概ね順調に研究が進展した。

今後の研究の推進方策

2023年度は、クライオ電子顕微鏡によるヒストンメチル基転移酵素-ヌクレオソーム複合体の立体構造解析を行なう。2022年度に引き続き、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析に適したヒストンメチル基転移酵素-ヌクレオソーム複合体を精製するため、試験管内における複合体の再構成時の試料濃度、架橋、精製方法の検討を行う。また、クライオ電子顕微鏡観察用試料を作製する際の試料濃度、溶媒組成、グリッドの種類、凍結条件の検討を行う。観察に適した試料が作製でき次第、クライオ電子顕微鏡を用いてデータを取得し、構造解析を行う。クライオ電子顕微鏡による立体構造解析に加え、クロスリンク質量分析法を用い、ヒストンメチル基転移酵素とヌクレオソームとの複合体におけるタンパク質間相互作用を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

COVID19流行による生産遅延と価格の高騰のため、予定していた試薬および実験器具の購入を見送った。代替品の購入により実験の遂行に問題が生じなかったことに加え、研究が順調に進展したため、2022年度に試薬購入費として使用予定だった研究費の一部を、2023年度に繰り越すことにした。2023年度には、クライオ電子顕微鏡解析、質量分析、およびこれらの試料作製に必要なタンパク質とDNAの精製を予定しており、次年度使用額はグリッド、生化学試薬、質量分析費用として使用する計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Nucleosome Structures Built from Highly Divergent Histones: Parasites and Giant DNA Viruses2022

    • 著者名/発表者名
      Sato Shoko、Dacher Mariko、Kurumizaka Hitoshi
    • 雑誌名

      Epigenomes

      巻: 6 ページ: 22~22

    • DOI

      10.3390/epigenomes6030022

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 病原性寄生虫Giardia lambliaのクロマチン基盤構造2022

    • 著者名/発表者名
      佐藤祥子、滝沢由政、Dacher Mariko、田中大貴、立和名博昭、飯倉ゆかり、鯨井智也、Ho Cheng-Han、安達成彦、胡桃坂仁志
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会

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公開日: 2023-12-25  

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