研究課題/領域番号 |
22K06181
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒谷 賢一 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 特任准教授 (10402778)
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研究分担者 |
川勝 弥一 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 研究員 (40899605)
中村 保一 国立遺伝学研究所, 情報研究系, 教授 (60370920)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ベンサミアナゲノム / GH9B3 / 接木 / ネットワーク解析 |
研究実績の概要 |
ベンサミアナタバコでこれまでに公開されていたゲノム配列データベースは不完全な部分が多く、遺伝子を解析する上で障壁となっていた。ベンサミアナタバコのゲノムは複二倍体であり、複雑な構造を取っているため、従来のショートリードタイプの次世代シークエンサーでは解析が困難であったため、PacBioのロングリードシークエンサーを利用し、ベンサミアナタバコ Lab strainの成葉から抽出したゲノムの解読を行った。1,668コンティグにより3.1 Gbを解読し、21スキャフォールドによって2.8 Gb、95.6%をカバーする配列を構築した。これにより信頼性の高い57,583遺伝子のアノテーションを推定した。ベンサミアナタバコとN. tabacumのゲノム構造の比較から、ベンサミアナタバコのゲノムにおいて2種の祖先植物由来のクロモソームが複雑に交雑していることを示した。 得られたゲノム配列情報を検証するため、ベンサミアナタバコの高い罹病性の原因遺伝子であるrdr1遺伝子と、これまでにベンサミアナタバコを接木したときに発現が上昇することを示している4遺伝子について配列の確認と遺伝子ファミリーの探索を実施した。その結果rdr1遺伝子を2つの転写産物に分断している変異が既知情報のとおりに検出された。また、接木時の組織癒合に関わることが想定されるGH9グルカナーゼ遺伝子についても既知情報と完全に一致し、ベンサミアナタバコにおいては1遺伝子のみ存在することが示された。それに対し、β-1,3-グルカナーゼ、XTH28、EXPB3の各遺伝子については既存ゲノムデータにおいて不正確であった、もしくは欠失していた情報が補完できた。 得られたゲノム情報を利用、配布するためのデータベースサイトを構築し、論文による成果報告に合わせて公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりベンサミアナタバコのゲノムリファレンスの不備を解消し、遺伝子アノテーションを構築できた。染色体として完全につながるところまでは達していないが、分子遺伝学的解析を実施する上で十分実用的なデータセットを得た。また、異科接木成立時に発現上昇が認められたGH9グルカナーゼ、道管形成に関わる事が推定される遺伝子群の数え上げと正確な遺伝子モデル構築ができた。
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今後の研究の推進方策 |
生育ステージ、器官、接木時系列等の遺伝子発現プロファイルデータベース、及びブラウザを構築し、公開する。このための発現データ取得に向けて組織サンプリング、RNA抽出、RNA-seqによる発現解析に着手済みである。GH9グルカナーゼ遺伝子など、接木時に発現が上昇する遺伝子群に着目して、ベイズネットワーク解析により、上流、下流の制御因子、実行因子を同定する。同定した。候補遺伝子についてベンサミアナ、およびシロイヌナズナで誘導発現系統、破壊系統を作出し、接木表現型に対する影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度額と合算して使用したいため
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