研究課題/領域番号 |
22K06200
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中村 駿 東京医科歯科大学, 高等研究院, プロジェクト助教 (80882779)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | タイトジャンクション / クローディン / 構造生物学 |
研究実績の概要 |
本研究は、タイトジャンクション構造基盤を解明し、その透過制御を可能とするモジュレータの創製を目指している。本年度は、構造未解明であるクローディンサブタイプのX線結晶構造解析に向けた実験及びクローディンサブタイプ特異的な結合親和性を高めたC-CPEの改変を進めた。研究開始時に構造未解明であるクローディンサブタイプについて結晶が得られていたため、その結晶性を高める検討を進めた。精製条件及び結晶化条件の最適化を進めてX線回折実験を行った結果、5Å程度の回折データが得られた。構造決定にはさらなる改善が必要であるため、結晶性を改善するためにN末端リンカーの長さを最小限にしたコンストラクトの検討を行い、良好に発現及び精製であることを確認できた。このコンストラクトについては今後結晶化及びX線回折実験を行い、結晶性の改善効果の評価を進め、分解能の改善を目指す。また、研究代表者がこれまでに構造決定したクローディン3とC-CPEの複合体の構造情報を基にして変異体を作製し、タンパク質レベルでのクローディンとC-CPEの相互作用解析を行い、C-CPE改変体の探索を行った。クローディンサブタイプによって特徴的な箇所における相互作用に着目した改変によって、特定のクローディンサブタイプへの結合親和性を高める可能性のあるC-CPEの複数種のアミノ酸変異を見出した。すなわち、クローディンサブタイプ間でアミノ酸残基の側鎖の大きさが異なる箇所に着目し、その箇所におけるC-CPE側のアミノ酸残基を変えることによって、側鎖の大きさに依存した親和性を示す変異を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造未解明であるクローディンのサブタイプについて、X線結晶構造解析に向けた実験を進めている。このサブタイプについて大量発現及び精製を行い、単分散性の良好な精製タンパク質が得られた。蒸気拡散法を用いた結晶化によって目的タンパク質の結晶が得られた。SPring-8のPX-BLビームラインにて定期的にビームタイムを取得して回折実験を行い、回折データを収集した。精製条件及び結晶化条件の最適化を進めた結果、回折データの分解能は現状では5Å程度であり、初期の分解能と比べ改善しているが構造決定にはさらなる改善が必要であった。結晶中でのパッキングにおいて特定の構造を形成しない柔軟な領域の存在は結晶のモザイシティが高くなる一因となると考え、結晶性を改善するコンストラクトとしてN末端リンカーの長さを可能な限り短くする検討を行った。リンカー長を最適化したコンストラクトの発現及び精製状態を小スケールにて確認し、これまでと同様に良好に発現及び精製できることが確認できた。また、既知の構造情報を基にした変異体解析によって、特定のクローディンサブタイプへの親和性を高めたC-CPEの改変を進めている。研究代表者が以前に構造決定したクローディン3とC-CPEの複合体構造を基にクローディン及びC-CPEの変異体を設計し、蛍光ゲル濾過を用いた結合実験によって親和性への影響を効率的に評価した。その結果、クローディンサブタイプによって特徴的な箇所における相互作用に着目した改変によって、あるサブタイプへの親和性を高め、別のサブタイプへの親和性を低下させるようなC-CPEの変異を複数種見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
クローディンサブタイプの立体構造を明らかにすることは、クローディンサブタイプ間で異なるバリア形成機構やC-CPE親和性に関する構造情報が得られるため重要である。現在結晶が得られているクローディンサブタイプの構造を決定するためには、回折データの分解能をさらに改善する必要がある。結晶性を改善するために作製したN末端リンカーを最適化したコンストラクトについては発現及び精製状態は良好であることが確認できたので、大量に精製タンパク質を取得して結晶化条件の最適化及び回折実験を進める。また、このサブタイプの他に良好に精製できるサブタイプを複数種選定しているので、これらについても並行してクローディンまたはクローディンとC-CPE複合体の結晶化実験を進める。また、特定のクローディンサブタイプへの親和性を高めたC-CPEの改変をさらに進める。これまでに同定したC-CPEの変異を踏まえ、血液脳関門の構成要素であるクローディン5を標的とするためには、さらなる改変が必要である。クローディン5への結合を実現させるためには、サブタイプ特異的な箇所における親和性を高めるとともに、クローディンに対する結合能を高める必要があると考える。今回検討した以外の箇所について、構造情報を基盤とした変異体解析をさらに進め、特定のクローディンサブタイプへの親和性を高めるようなアミノ酸残基を探索する。
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